あきりんの映画生活

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「秘密の森の、その向こう」 (2021年) 森の奥におばあさんの家がもう一軒あった

2021年 73分 フランス 
監督:セリーヌ・シアマ
出演:ジョセフィーヌ・サンス、 ガブリエル・サンス

ファンタジーもの。 ★★★☆

 

亡くなった祖母の遺品整理のために、8歳のネリー(ガブリエル・サンス)は両親と一緒に祖母の家にやって来る。
そこは森の中の一軒家。
ネリーは大好きだった祖母が使っていた杖を思い出の品としてもらう。

 

しかし、少女時代をこの家で過ごした母は、祖母との思い出に耐えきれなくなって帰ってしまう (母方の祖母だったんだね)。
父親と二人で祖母の家に残ったネリーは森の中を散策する。

 

人気のない静かな深い森が美しい。
そして主人公の少女が可愛い。
誰かに似ているなと思って観ていたのだが、思い出した。そうだ、藤田嗣治が独特の乳白色で描くあの少女の顔だった。
唇の感じは藤田の絵の少女ほど意地悪そうではないけれど・・・。

 

するとネリーは、森の中で一人で遊ぶ母マリオンと同じ名前の8歳の少女と出会う。
少女に招かれてネリーがさらに森の奥の彼女の家を訪れると、あれ? そこは祖母の家と同じ家だった・・・。
そしてそこにはマリオンのお母さんもいた。
そのお母さんはネリーの祖母が使っていた杖をついていた・・・。あれ? と言うことは・・・。

 

ねえ、よく聞いてちょうだい。マリオン、あなたは私のお母さんなのよ。
二人の少女はそれほど混乱することもなく、その事態を受け入れる。
このあたりの奇妙な平静さがファンタジーの雰囲気を柔らかいものにしていた。

 

ネリーが時空を越えて過去の世界へ行ったのか、それとも、二つの時代が同じ森の中で重なり合ったのか・・・。
ネリーが森の中から戻ってくると、そこには父親の待つ今の祖母の家があるのだ。
そして少女のマリオンがネリーに連れられて今の祖母の家に遊びに来たりもするのだ。

 

このネリー役のガブリエルとマリオン役のジョセフィーヌは、実際は双子の姉妹である。
道理でよく似ているはずだ。
映画のなかでは母娘なので似ているというわけだが、この少女二人がうり二つという映像は、そんなことを越えた不思議な物語世界によく合っていた。

 

原題は「小さなお母さん」といったところか。あまり工夫がない。
かといって、邦題はいささか気取りすぎていて、やり過ぎた感がある。
タイトルの付け方は難しい。

 

ネリーは祖母が亡くなる前に別れの言葉を言えなかったことがずっと気になっていたのだ。
しかし、少女マリオンのお母さん(つまり祖母)ともう一度会ったことによって、喪失感から脱する。
心の整理がついたようなのだ。好かったね。

 

1時間10分ほどの小品ですが、ああ、好い映画を観たなあという気持ちになれます。

 

観終わった後に、誰もが、どうなんだろう?と思うのは、お母さんのマリオンは子どもの頃にネリーと会った記憶があるのだろうか、ということ。
おそらくそれはこの映画ではどうでもいいことなのだろう。
ちなみに、セリーヌ・シアマ監督はインタビューでの、マリオンにその記憶はあるか?の質問に、それはどうでしょうか。私はそうは思いませんが、と答えたそうだ。