あきりんの映画生活

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「ふたりの5つの分かれ道」 (2004年)

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2004年 フランス 90分
監督:フランソワ・オゾン
出演:ステファン・フレイス、 ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

時間を逆のぼるラブ・ストーリー。 ★★★

あるカップルの恋愛の軌跡を、離婚から出会いの瞬間へと時間軸を逆に辿りながら5つのエピソードを見せる映画。
5つの場面とは、二人の別れ、特別なディナー、出産、結婚式、出会い。

(あらすじを知っても面白みが減る種類の映画ではないので、とりとめもなく書きます)

冒頭はマリオンとジルの離婚手続きの場面。
そのあとで、最後のセックスをするためにホテルの一室に入る二人。
しかしふたりの気持ちのずれが 露わになっただけの結果となる。
もう、どうしようもなく離れた地点にふたりがいることが、荒涼とした雰囲気で伝わってくる。

このときに流れてくる音楽は、ボビー・ソロのイタリアン・ポップス「頬にかかる涙」。
この選択には、えっ、これはそのまま過ぎるのではないかい、冗談か?と苦笑いをしてしまった。

少し時がさかのぼる。
二人は、ジルの兄、その恋人(男性)と4人での夕食会をしている。
ジルの兄とその恋人は、お互いに相手を束縛するのは間違っているという。
マリオンは、束縛することになろうとも夫婦の関係を維持することにこだわっている。
う~ん、これは男と女、ゲイ同士という違いによるもの? それともなにか普遍的な考え方の違い?

次の出産は特に印象深いエピソード。
マリオンが緊急の帝王切開をおこなうことになったという知らせを聞いたジル。
職場を急いで飛び出したのだが、なんとレストランに入って時間をつぶしてしまう。マリオンからの電話にも出ない。
やっと病院で我が子をガラス窓越しに見たジルに、マリオンはただ、着替えを持ってきて、とだけ頼む。
父親になることから逃げようとしたジル、そんなジルに諦めたかのようなマリオン。
なにか、お互いに辛いよなあ。

ここでマリオンの両親のエピソードが挟み込まれる。
彼らは父の浮気でしょっちゅう罵りあって喧嘩をしている。しかし、仲がよいのだ。
愛し合っていれば、お互いに諦めない? お互いが大事だからこそ罵りあう?

二人の結婚式の日。
新婚初夜に飲み過ぎたジルは、マリオンが服を脱いでベッドに入ってきたときにはもう熟睡してしまっていた。
一人でホテルを抜けだしたマリオンは、深夜の森の中で行きずりの相手とセックスをしてしまう・・・。
しかし、そのあとで部屋に戻ってきたマリオンは、ジルを深く愛していることをあらためて感じているようなのだ。

そして二人の出会いの場面になる。
それこそ輝くような夕陽の海に並んで入っていく二人の姿が、ここから始まったのに・・・と思わせて上手い。

90分という比較的短い時間の作品。
5つの場面を見せて、そのエピソードの間に流れたものは見る者に想像させるという手法。
オゾン監督らしい巧みさを感じた。
(ただ、”分かれ道”とつけた邦題はちょっと違うなあ、という感じでした。)