1957年 155分 アメリカ 立場を超えた友情?
監督:デビッド・リーン
出演:アレック・ギネス、 早川雪舟、 ウィリアム・ホールデン
戦争物。 ★★★☆
主題歌「クワイ川マーチ」があまりにも有名なこの作品、戦闘場面こそないものの、戦争がもたらす狂気を描いていた。
舞台はタイとビルマの国境近くにある日本軍の捕虜収容所。
ここでは、連合軍捕虜を使って所長の斎藤大佐(早川雪洲)が国境に流れるクワイ河に橋を架けようとしていた。
だが、捕虜となった英軍のニコルソン大佐(アレック・ギネス)は、将校を労働させるのはジュネーヴ協定に反する、として将校の使役を拒否する。
前半では、二人の大佐のそれぞれの矜持とプライドが対立し、意地の張り合いが起きる。
互いに引けないところまでいってしまいそうな緊張感が続く展開に引きこまれる。。
アレック・ギネスはもちろん英国人らしい誇りを充分に表現している。
かたや早川雪舟も古武士を思わせる頑なさをよく出していた。
やがて二人の大佐は譲歩点を見つけ出す。
どちらも自分に嘘をつきたくないというぎりぎりのやりとりを通して、互いに認め合う部分を見つけたのだろう。
協力的になった英軍捕虜たちによって橋の建設工事が再開される。
斎藤大佐はもちろん満足し、自分たちの能力が十分に発揮できているとニコルソン大佐もやりがいを見いだしている。
ここで動き出すのが収容所からの脱走に成功した第3の人物。
不可能だといわれていたジャングルの奥からの脱走にアメリカ兵のシアーズ中佐(ウィリアム・ホールデン)が成功するのだ。
そして彼のもたらした情報によって、連合軍によって建設中の橋の爆破作戦がおこなわれることになる。
ここからは最後に向かう良質なスペクタクル場面となる。
シアーズ中佐らが橋に仕掛けた爆薬、そこから秘かに延びている導火線と岩陰の爆破スイッチ。
日本軍を乗せてそして鉄橋に向かってばく進してくる列車。
そして、クワイ川にかけられた橋はどうなったか。大団円となっていく。
うわべだけ観ていれば、立場を越えた英軍大佐と所長の信頼関係と、それによりやっと作られた橋があっけなく瓦解していく物語、と捉えることが出来る。
そこに戦争というものの空しさを描いた、と、通り一遍の解釈ならなるところ。
この映画で私が引っかかったのは、敵対する立場の二人の大佐の行為・・・。
斎藤大佐が期日までに橋を作ろうとするのは、これは日本軍のため。彼の立場からすれば容易に納得できる。
橋を爆破して日本軍に打撃を与えようとしたシアーズの行為も、これも納得できる。
しかし一番理解不可能だったのはニコルソン大佐。彼の行為はなんだった?
映画「大脱走」では、捕虜は敵の勢力を分散させるためにも脱走を試みるのが使命なのだ、という意のことを言っていた。
これにはなるほどと思ったものだった。
とすると、敵のために橋を一生懸命作るニコルソン大佐の行為は、いわゆる利敵行為ではないのか。
規律ある軍を自分が正しく指揮すればこんなにも能率よい作業をすることができる・・・。
それはそれでいいのだが、その作業が意味するものをニコルソン大佐は見失っているように思えた。
これも戦争状態がもたらした一種の狂気?
とは言っても、やはり見応えのある骨太映画です。
アカデミー賞では作品賞をはじめ7部門を受賞しています。