1997年 101分 イギリス
監督:イアン・ソフトリー
出演:ヘレナ・ボナム=カーター、 ライナス・ローチ、 アリソン・エリオット
文芸恋愛もの。 ★★★
物語は1910年のロンドンの社交界を舞台に始まる。
親の保護を失ったケイト(ヘレナ・ボナム=カーター)は、資産家の伯母モード(シャーロット・ランプリング)に育てられている。
高価な首飾りをもらったりして、金銭的には十分に面倒をみてもらっているのだが、伝統と格式を重んじる伯母にケイトはいささかうんざりしている。
そんなケイトは貧しいジャーナリストのマートン(ライナス・ローチ)との結婚を望んでいる。
でも、そんな結婚を伯母が許してくれるはずもない。
一文無しになってまで愛を貫く勇気もない(生活能力のまったくない父親の暮らしも伯母に頼っている)。どうしよう?
ヘレナ・ボナム・カーターが奔放な愛に揺れ動く乙女を巧みに演じていた。
彼女といえば、パートナーだったティム・バートン監督の映画でのコスチューム・プレイが印象的だったので、この映画でのまともな(?)役は新鮮だった。
太眉で(かつての井上咲楽みたい 笑)、どこか愛嬌のある顔立ちだった。
ケイトの前に、”世界一裕福な孤児”といわれるアメリカ人女性ミリー(アリソン・エリオット)があらわれる。
純真なミリーは、ケイトとの関係も知らずに、マートンに恋をしてしまう。
しかも天涯孤独な彼女は重い病に冒されており、余命がいくばくもなかったのだ。
一計を案じたケイトはミリーを誘ってベニス旅行に出かける。そこに偶然を装ったマートンも現れる。
太眉のケイトは、ミリーの莫大な遺産を奪おうと、マートンとの仲を取り持とうとしたのだ。
ケイトとマートンの陰謀に彩られた美しい水の都での優雅な旅の日々。
そしてミリーとマートンをベニスに残して立ち去るケイト。
マートン、うまくやるのよ。でも私のことを忘れては駄目よ。
原作はヘンリー・ジェームズの同名小説(未読)。
かなりの長編小説のようで、登場人物も錯綜しているようだが、映画では3人のそれぞれの恋心に的を絞っていた。
美しいベニスの風景のなかで、おずおずとマートンに近づいていくミリー。
やがてミリーもマートンの偽りの愛に気づき、それでもなお彼を愛して・・・。
そして偽りの愛だったはずのマートンなのだが・・・。
自分たち二人のための画策をしたケイトだって決して悪人ではない。自分の恋を成就させるためにお金が欲しかっただけ。
それなのに、その恋は・・・。
(以下、ネタバレ)
偽りの愛と知りながらも莫大な遺産をマートンに残してミリーは亡くなっていく。
なんて純真だったんだ、ミリーは。
親友を騙しその遺産を手にしたケイトは、その親友を失った喪失感に苛まれる。
そして真にミリーを愛してしまったマートンが一人で思い出の地のベニスを訪れるシーンで、この映画は終わっていく。
三角関係を描いた愛憎劇なのだが、ドロドロとした感じはまったくなかった。
それどころか3人にはそれぞれの切なさを感じてしまった。
ヘレナ・ボナム=カーターのこれまで知らなかった魅力を発見した作品だった。