1999年 112分 アメリカ
監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ジョン・キューザック、 ジョン・マルコヴィッチ、 キャメロン・ディアス
不条理コメディ。 ★★★★
売れない人形使い師のシュワルツ(ジョン・キューザック)は、新聞の求人欄で見つけた小さな会社に就職する。
そこはビルの7階と8階の間につくられた天井が極端に低いフロアにあった。
なんだ、これ? 何の意味がある設定?
そしてシュワルツは机の後ろに隠されていた小さなドアを見つける。
長髪でむさ苦しい主人公がジョン・キューザックだとはじめは気づかなかった。気づいて、うわぁ。
それ以上に気づかなかったのが、奥さん役のキャメロン・ディアス。
ちょっと似ているけれど、こちらもむさ苦しいし、まさかなあ、と思っていたら、本当に彼女だった。うわぁ。
よく観れば、さすがに可愛かった(汗)。
さて。
その小さなドアの向こうには穴があり、そこはなんと・・・、俳優のジョン・マルコヴィッチの頭の中につながっていた。
その穴に入ると誰でも15分間だけマルコヴィッチになることができるのだ。
なんだ、これ? なんの意味がある設定?
これがスパイク・ジョーンズの長編デビュー作で、脚本はチャーリー・カウフマン。
カウフマンといえば、自身も監督として「脳内ニューヨーク」という奇妙な映画を撮っていた。
あれは、思い浮かべた(要するに脳内にある)ニューヨークの街並みを全部セットで作ってしまおうというものだった。
シュワルツと奥さんのロッテはその"マルコヴィッチの穴"を使っての商売を始める。あなたもマルコヴィッチになれますよ。
すると連日行列が続くほどの大盛況。
人って、そんなに他人になってみたいという願望があるのだろうか。
もう一人の重要な登場人物がシュワルツの同僚のマキシン。
妙にシュワルツにこびを売ってきたかと思えば、彼女はバイセクシャルのようで、ロッテにも言い寄ってくる。
マルコヴィッチの身体を利用すれば女同士でもセックスできるわよ。
これはなんという設定だ。もうぶっ飛んでいるぞ。
でも、こういうシュールなお話って好きなんだよな(喜)。
よく考えれば、抵抗不可能で身体を(考えも)乗っ取られてしまうマルコヴィッチも可哀想。
この役のオファーを受けて演じたマルコヴィッチ本人がすごい。
吹っ切れているな。さすが怪人俳優ジョン・マルコヴィッチだ。
傑作だった場面は、マルコヴィッチも自分の頭の中に入ってみたいと言い始めてその穴に入るところ。
すると、世界中の人物がなんと全員マルコヴィッチになっている。
女性も紳士も全員がマルコヴィッチの顔、顔、顔。さすがに笑える。
シュールな映画だが、その中でも一番シュールな映像だった。
後半になると、マルコヴィッチの身体をのっとったシュワルツは、彼を人形使い師として操り始める。
実際の人間を操る人形使い師、というわけだ。
これはなかなかに面白い展開だった。
マルコヴィッチの友人役でチャーリー・シーンが出てきたり、ショーン・ペンが出てきたり、一瞬だけブラッド・ピットが顔を出したりもする。
ウィノ・ライダーも出ていたということだが、どこだったか判らなかった。
そしてロッテと寝たマキシンは妊娠するのだ。
彼女たち二人の仲に嫉妬したシュワルツはロッテを檻に閉じこめたり。
もうすごい展開だね。キャメロン・ディアスも吹っ切れていたぞ。
不条理というか、形而上的というか、まともな解釈なんかまったく受け付けない種類の映画。
はまる人にはたまらない映画。そうじゃない人は怒り始める映画。
はい、私ははまりました。