1959年 フランス 87分
監督:ジャック・ドニオル・ヴァルクローズ
出演:フランソワーズ・ブリオン、 アレクサンドラ・スチュワルト、 ベルナデット・ラフォン
城館を舞台にした6人の恋愛模様。 ★★☆
遺産相続の手続きのために、ミレナは長年会っていなかった従兄妹を城館に呼ぶ。しかし兄と称して妹セラフィーヌと一緒にやって来たのは、セラフィーヌの恋人ロベールだった。館には好色な執事と、新しく雇われた若い女中もいた。
遺言を執行する公証人ミゲラもやって来て、6人の男女がそろう。
こうして古城の館を舞台にして、ミレナとロベール、セラフィーネとミゲラ、執事と女中という三組の男女の恋愛模様が始まる。
ロベールとセラフィーヌはもともと愛人関係だし、女中はロベールにも色目を使ったりするから、ま、そのあたりの大人の人間関係が面白い。
広大な城館を舞台にしているので、部屋は豪華で、広い庭にはプールもあり、塔屋からの見晴らしも良い。
長い夏の夜の男女の駆け引きが、モノクロの画面で優雅に描かれる。
映画自体は上品で、どこか懐かしいような感じも抱かせる。夏の夜に特有の気怠い雰囲気も漂っていて、そこも魅力である。
3人の女優は知らない人ばかりだったが、それぞれに雰囲気を持っていて、みな美しかった。
監督のジャック・ドニオル・ヴァルクローズは、ヌーベル・バーグの母胎となった評論誌「カイエ・デュ・シネマ」の編集長だったとのこと。
そのわりには作品自体はきっちりと撮られていて、即興的な部分とか、映画としての物語を逸脱させようとの意図などは、全く感じられない。
彼がJ.L.ゴダールやF.トリュフォーなどより10歳あまり年長だったことが関係しているのかもしれない。
映画全体の感じがなにかに似ているなと考えていて、ああ、そうだと判った、イングリッド・ベルイマン監督の「夏の夜は三たび微笑む」だった。
あちらも館を舞台にくりひろげられる何組かの男女の恋愛ゲームだった。
それにしてもフランス人て、俺と寝ろと言って追いかけてくる男と、本当に寝てしまうんだな。あなたなんか顔が下品だから嫌いよ、なんて言っておきながらね。
モニカ・ヴィッティの映画「唇からナイフ」と間違えてはいけません(笑)。