2009年 スペイン 128分
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、 ルイス・オマール
悲劇的なラブ・ストーリー。 ★★★☆
パトロンのいる美貌の女性レナ(ペネロペ・クルス)は女優志望で、新しい映画を撮ろうとしていた監督マテオ(ルイス・オマール)と知り合う。
二人はすぐに愛し合う仲となるが、それを疑うパトロンは激しい嫉妬にかられる。
同時に二人の男に愛された女性に待っていた運命を軸に、その周りを囲む人たちの物語が描かれる。
ペネロペがあまりにも美しい。
魅せられた男は、幸せな男も不幸せな男も、自分の人生を彼女に賭ける。それほどに美しい。
監督のペドロ・アルモドバルは「ボルベール<帰郷>」でもペネロペ・クルスを美しく撮っていた。
この作品でも、華やかなペネロペをさらに際立たせるように原色の鮮やかさが印象的。
しかし、この映画はペネロペの美しさだけではない。
マテオはある事件で視力を失っているのだが、同時に失わったさらに大きなものがあったのだ。
作品は、マテオが14年前のできごとを回想するかたちですすむ。
年月が、現在を生きている人たちに哀しくのしかかってきているようであった。
醒めた目で見れば、登場人物は、レナも含めて、マテオもパトロンも皆エゴイストばかり。
自分のなかにある愛を制御できなくて、自分勝手な行動にはしる人ばかり。
”愛に狂う”とそうなってしまうのだろうか。
スペイン調の音楽が効果的に使われる。
映画の後半に、マテオとレナが訪れる海辺の光景が美しい。
しかし、今のマテオは失明しているし、レナが不在であるのだから、なにか大きな悲劇が起こったのであろう事を、観ている誰もが予感している。そして・・・。
14年前にも風の強かった海辺を、ふたたびマテオが訪れる。
その光景が美しいだけに哀しさが際立つ。
欠落しているものがあることが哀しい。
失われたものをふたたび取り戻そうとして映画は終わる。
それでもなお、欠落しているものがあることが哀しい余韻だった。