あきりんの映画生活

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「長い散歩」 (2006年)

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2006年 日本 136分
監督:奥田瑛二
出演:緒形拳、 杉浦花菜、 高岡早紀、 松田翔太、 奥田瑛二

心が傷ついた老人と少女が彷徨う。 ★★★☆

静かな作品だが、これはかなりじーんとくるものがあった。
校長を定年まで勤めあげたものの心には何も残っていなかった老人と、実母から虐待されていた5歳の少女が、あてもない旅にでる、そんなどちらかと言えばマイナーな感じの物語である。
ただ、祖父と孫ほどの歳の違う傷ついたもの同士が、次第に寄り添っていく様が情感を残す。

緒形拳が演じる安田松太郎は、人を赦すことを知らずに生きてきた。
そのために妻はアルコール中毒になって亡くなり、娘とは疎遠である。
彼自身がこれまでの人生で得てきたものは、彼に何ももたらしていなかったのだ。
そんな人生を振り返った時、松太郎は自分自身も許すことができなかったのだろう。

松太郎が淋しい生活を始めた安アパートの隣の部屋にすんでいた少女がサチ(杉浦花菜)。
背中に、学芸会で使った玩具の天使の羽根をつけたサチが哀れだ。
始めに名前を聞かれたサチは、自分のことをガキと名乗る。
そう言われ続けてきたのだ。
ひとかけらの愛情も知らずに育ってきた少女は、愛情の受け取り方もしらなかったのだ。

今の境遇から何とかしてやろうと、松太郎はサチを連れて旅にでる。
初老の緒形拳の姿には哀愁が漂っている。
松太郎は人を助けることを求めたのだろう。
それは、自分自身を許して、助けることでもあったのだろう。

高岡早紀が演じる母親がひどい母親。
男と同棲して、わが子には無関心、そして自分の感情のままに平気で幼児虐待をおこなう。

そんな母親に刑事(奥田瑛二)が、自分の子供なんだからもう少し関心を持ってやれないのか、と問いかける場面がある。
母親は、自分もこうやって育てられてきた、同じことを自分も子供にしているだけだ、と答える。
辛い負の連鎖がここにはある。

母親が捜索願を出したために、松太郎は幼時誘拐犯として追われる立場になってしまう。
そのことを知った松太郎が、警察に自ら電話をする場面がある。
刑事は、お前のしていることは犯罪だぞ、と諭す。
すると松太郎は、あの子は地獄の中で生活していたんだ、本当に悪いのは誰なのか、警察ならちゃんと調べろ、と怒鳴り返す。

観ている者もその通りだと思う。
しかし、それならどうすれば良かったのか・・・。

最後近く、二人の旅を終える決意をした時に、松太郎はサチの前で人目もはばからずに泣く。ただ、泣く。
そんな松太郎をサチは、泣かないで、サチがいるからね、となぐさめる。
やはり、じーんとくる。

あれからサチはどうなったのだろう。
あれからの生活がどんなものであったにせよ、松太郎と”長い散歩”をして、その間、人に愛されていたという経験をしたからには、何かしらのものが心に芽生えていたに違いない。

旅の途中で知り合う青年(松田翔太)も、自分の居場所がわからずに彷徨っています。
地味な映画です。でも、良い映画です。
モントリオールでグランプリを受賞しています。