あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「スプリング・フィーバー」 (2009年)

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2009年 中国 115分
監督:ロウ・イエ
出演:チン・ハオ、 チェン・スーチョン、 タン・ジュオ、 ウー・ウェイ、 ジャン・ジャーチー

男女5人の愛憎劇。 ★★☆

この映画が語られる時は、どうしても2つの要素がついてまわる。
一つは、監督のロウ・イエが中国政府から弾圧を受けている身でありながら、家庭用ビデオ・カメラでゲリラ的に作成した映画であるということ。
もう一つは、禁断の男性同士の愛を描いているということ。

手持ちカメラなので、画面はぶれまくっている。
それに粒子が粗く、光量も充分でないからか、全体に沈んだ調子である。
しかし、展開される登場人物たちの心の動きを丹念に追っていて、画面に切り取られる南京の街や郊外の風景は物語性を孕んでいて、美しかった。
映画全体の湿ったような雰囲気とはかえって合っていた。

問題はもう一つの方。
う~む、どうしてもゲイの映画は生理的に駄目なんだなあ(「ブロークバック・マウンテン」も見ることができないし、「ブエノスアイレス」も駄目だった)。
こればかりはどうしようもない(じゃあ、なんで観るんだよ、と言われてしまいそう)。

それさえ抜きにすれば、映画自体の出来は大したものだった。
妻がありながら男性の恋人を持つ夫。その妻に夫の浮気調査を頼まれる調査員。そして彼の恋人。
男を愛する女、男を愛する男、女を愛しながらも男に惹かれていく男。
それぞれの愛の形が、どちらかといえば陰湿な感じで交叉していく。
みんな真剣なのだが、どの愛も出口が見えないような愛だから、画面には雨が降っていたり、砂埃が舞っていたりする。

中国映画特有の(と私は思っているのだが)、かなり長い年月にわたる愛憎の物語を描いている映画。
見終わったあとにぐったりと疲れが残るような、そんな澱のようなものを残す映画であった。

ゲイに抵抗のない方だったら、十分にお勧めできる映画です。

(余談)
オーストラリアのシドニーには、レインボー・タウンと呼ばれる一角がある。
虹の旗が立ち並ぶ瀟洒な街並みなのだが、そこはゲイでは集まって暮らしているとのこと。
朝、手をつないで散歩している男性二人などは間違いなくそうなのだろうが、ただ並んであるいている男性同士を見ても、あの街では、ひょっとするとあの二人もそうなのだろうかと思ってしまった。