あきりんの映画生活

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「パリ、ただよう花」 (2011年)

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2011年 フランス 105分
監督:ロウ・イエ
出演:コリーヌ・ヤン

絡み合う男女の愛。 ★★☆

先日、テレンス・マリック監督の「トゥ・ザ・ワンダー」を観た。
ひと組の男女の愛の物語だったが、今度はロウ・イエ監督が描くひと組の男女の愛の物語を観た。

北京からパリにやって来た中国人留学生のホア(コリーヌ・ヤン)は、肉体労働者のマチューと出会う。
半ば犯されるように抱かれた彼との関係の始まりだったが、なぜか彼に惹かれていく。
そして彼女のアパートでの生活が始まる。

マリック監督の描く美しい映像の作品とは正反対の、ぎらぎらしたような荒々しい作品。
相手の身体をむさぼるようなお互いの求め方が、汗となり、体臭となって、画面のこちらにまでしみ出てくるようだ。

ロウ・イエ監督は「スプリング・フィーバー」でも肉欲にからむ恋物語を、どろどろとした雰囲気で描いていた。
(もっともあちらは男性同士の恋物語だったが。)
監督は当時は政府から映画を撮ることを禁じられていて、「スプリング・フィーバー」は手持ちカメラで撮ったゲリラ的な作品だったとのこと。
こちらは映画を撮ることを許可されての初めての作品とのことだが、それでも映画を撮ることへの原初的な希求が荒々しさに繋がっているような気がする。

異国の地での異国の男性との刹那的な求め合い。
二人の育った文化が異なるのはもちろんだが、基本的な生活や教育レベルもまったく異なっている。
学問をおこない知的な職業に就くことが決まっているホア、かたや、工事現場での肉体労働で賃金をもらっているマシュー。
友達関係もお互いに重なる部分はまったくなく、マチューはホアの学友たちと大げんかをしたりもする。

身勝手なマチューの、身勝手な行動はときに腹立たしくなるほど。
そんなマチューをそれでも愛しているというヒロインの心情は、最後までよくわからなかった。登場人物たちに共感することはかなり難しい。

やがてマチューから唐突に求婚されるホア。
しかし、教育も文化もまるで違う2人の結婚観はあまりにも大きく隔たっている。
こんな二人が同じ将来を一緒に見つめられるはずがない。結婚が上手くいくはずがない。

なぜに二人は惹かれ合っているのだろうか。
もしかすれば、自分が本当に求めているものの一時的な代用として相手を欲しているだけなのかもしれない。

ふたりともそれぞれにとても身勝手なのかもしれなかった。
だから、観ていて甘い雰囲気にうっとりとして、といった安易な鑑賞を許すような映画ではなかった。

暗い情念が渦巻いているような、そんな映画です。