2007年 アメリカ 95分
監督:リー・タマホリ
出演:ニコラス・ケイジ、 ジェシカ・ベール、 ジュリアン・ムーア
予知能力者のアクションもの。 ★★★★
大好きなフィリップ・K・ディックの小説だが、その世界を映像化するのは、かなり難しいと思う。
彼の小説では記憶世界が現実世界と入り乱れることが多いし、時間軸も錯綜することが多い。
どうやって映像化するのだ?と思ってしまう。
しかし、彼のいくつもの小説が映画化されている。
この「NEXT-ネクスト-」を始めとして、「ブレードランナー」「マイノリティ・リポート」「トータル・リコール」「ベイチェック消された記憶」「スキャナー・ダークリー」など。
まだ他にも私の知らないものがあるのだろう。
彼の小説世界が、映画監督の想像力をかき立てるのだろうな。
さて、この映画は・・・。
しがないマジシャンのクリス(ニコラス・ケイジ)は、実は2分先を予知できる能力を持っていた。しかし、彼はこの能力を人に知られないようにひっそりと暮らしていた。
ところが彼の予知能力を知った女性FBI捜査官カリー(ジュリアン・ムーア)が、テロリストが持ち込んだ核兵器捜査への協力を強引に求めてくる。
この作品の鍵は、クリスが予知できるのは自分に関係する2分先だけ、ということ。
当然のことながら、彼の行動が変われば、その2分先の未来も変わる。
たった2分先のことがわかっても、そんな大した役には立たないだろうと、普通は思ってしまう。
ところが、この2分間先がわかるというのは、結構すごいことなのだ。
たとえば、殴り合いをする羽目になったときに、相手の動きをあらかじめ知ることができるので、それをかわすことは容易いわけだ。
こちらの攻撃に相手がどう対応するかのシュミレーションもできるので、その裏をかくこともできる。
喧嘩をしても負けるはずがない。これはすごい。
それに、意中の彼女(ジェシカ・ビール)と知り合いになろうとするときにも、ある行動を取ったときに彼女がどう反応するかを、事前に知ることができる。
彼女の反応が思わしくなければ、別の行動を取ったときの2分先を見ればよいわけだ。
これは大変に便利。彼女に限らず、対人関係で失敗することがなくなる。
さらにすごいのは、狙撃された場合でも弾がどこへ飛んでくるのか予知できるので、よけることができる。
すごいぞ、「マトリックス」も凌駕する(笑)。
これを生かしてのアクション場面も迫力満点だった。
崖の上から転げ落ちてくる岩や鉄骨を間一髪で避けつづける。超能力はやはりすごい。
ということで、設定の面白さを生かしてのストーリー展開ははらはらさせて飽きさせない。
しかし、途中からこの”2分間だけ先が見える”という設定がうやむやになってくる感じがする。
そして最後は、え~っ!という展開となる。そんなの、ありか~?
というわけで、大方のこの映画に関する評は大変に悪い。
B級映画の典型だ、とか、ニコラスもジュリアンも何故こんなつまらない映画に出たんだ、とか、もう散々な酷評が多い。
しかし、私は大変面白く楽しんだ。
”2分間だけ先が見える”という能力も、運命の彼女に関する場合にはこの制約がないと、物語の始めのほうで明かされていたし(ダイナーへ彼女があらわれるという予知、ね)。
だから、最後のアレも、必ずしも予告なしのルール違反ではないと考えられる。
そりゃ、驚いたけれど。
それに、八の字眉のニコラスが、いつものように少し困った顔つきで一生懸命頑張っていると、つい許してやりたくなる。
(とは言っても、「バンコク・デンジャラス」や「ウィッカーマン」は許せなかったぞ)。
これでヒロインがもう少し可愛いと、もっと良かったのだけれど。