あきりんの映画生活

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「オンリー・ゴッド」 (2013年)

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2013年 アメリカ 90分
監督;ニコラス・ウィンディング・レフン
出演;ライアン・ゴズリング、 ヴィタヤ・パンスリンガム、 クリスティン・スコット・トーマス

ものすごい暴力の映画。 ★★★☆

「ドライヴ」のレフン監督とライアン・ゴズリングが再びコンビを組んで作り上げた作品。
過激な暴力描写が散乱していて、それでいてスタイリッシュ。
原題は ”神だけが許してくれる” とでもいったところだろうか。

舞台は猥雑な街、タイのバンコック。その暗黒街。
説明がほとんど入らないので、ある程度の物語設定を知っておく方が判りやすい。
つまりはこうだ、
売春をしていた幼い少女を殺してしまったビリーを、少女の父親が復讐のために殺す。
ビリーの母クリスタル(クリスティン・スコット・トーマス)は、ビリーの弟ジュリアン(ライアン・ゴズリング)に兄の仇を討てと命じる。

赤や青の原色が散乱するような画面は、薄っぺらい派手さと、その影にある奥行きを感じさせる。
ときおりジュリアンの想念の映像が、イメージ画像のように挟み込まれる。
だから観ている者の感情も微妙に揺れ動いてしまう。
かなりスタイリッシュな映像構成をしている。

この映画にはチャン(ヴィタヤ・パンスリンガム)という不思議な男が登場する。
私的警察のように、自分の信じた正義をどこまでも貫く男である。
殺された少女の父親に復讐を成し遂げさせ、その父親にも、娘に売春などさせたお前にも罪がある、と言って、背中から取りだした刀で父親の腕を切り落とす。

この映画の主人公は、ジュリアンではなくチャンなのかもしれない
信念に基づいておこなう行為は、たとえどれだけ惨いことであろうと神だけは許してくれる、とでも考えているようなのだ。
神の許しを信じて無残な暴力を続けているようなのだ。

それにまったく相対するのがジュリアンの母親のクリスタル。
麻薬の元締めをしているような強烈な母親。
自己中心的な行動だけ。神もへちまもない。演じているクリスティン・スコット・トーマスの迫力も半端ではない。怖ろしいよう。
殺された兄のビリーを溺愛し、弟のジュリアンは可愛がらない。
そのくせ、勝手な自分の要求をジュリアンに突きつける。

一方のジュリアンにはぬぐいきれないマザー・コンプレックスがあったのだろう。
そのためか、性的不能者のように思える場面もあった。
ゴズリングはこの映画でも、内面をあらわすことはせずに、ほとんど無表情にジュリアンを演じている。
格闘での一騎打ちをしたチャンには完膚ないまでに叩きのめされたりもする。

そのチャンはときおり舞台に上がってカラオケを歌う。手下たちは大人しくその歌を聴いている。
この場面は意味不明なのだが、印象的。あれにはどんな意味があった?

前作「ドライヴ」よりもかなり尖っていて、登場人物たちもみな強烈。
映画のラストは、えっ!というような展開となる(気の弱い人は、要注意)。
間違ってもデート映画に観てはいけません。