あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ウィスキー」 (2004年)

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2004年 ウルグアイ 94分
監督:ファン・パブロ・レベージャ & パブロ・ストール
出演:アンドレ・パソス、 ミレージャ・バスクアル、 ホルヘ・ボラーニ

市井の人の人間ドラマ。 ★★★

ウルグアイの映画なんて初めて観た。
それもそのはずで、ウルグアイで作られた映画はこれまで60本しかないという。
素朴な味わいの、しかし、なかなかに深いものを感じさせる作品だった。

ハコボは小さな靴下工場を細々と経営している無口で頑固な中年男。 毎朝決まった店で決まった朝食を取り、決まった時間に工場のシャッターを開け、決まった手順で機械を動かす。
彼の工場で働く地味で真面目な中年女性がマルタ。ハコボとは必要以外の言葉を交わすこともなく永年やってきている。

二人の単調な、事務的な日常から映画ははじまる。なんの変化もない日常がくり返されているのだ。
そこにブラジルで暮らすハコボの弟が訊ねてくることになる。 ハコボは、弟が滞在する間だけ、マルタに夫婦の振りをして欲しいと頼む。
こうして、普段から会話の少ない2人は、どこかぎごちない偽装夫婦になってエルマンを迎える。

映画のキャッチコピーは「ウィスキーは幸せの合い言葉」。
とくれば、この映画を見はじめた人は誰でも、偽夫婦のふりをしているうちに二人の間に心の交流が芽生えてハッピーエンドに向かうに違いないと思う。
誰だってそう思う。
ところが、どっこい、そうは向かわないのだ。このキャッチ・コピーに騙された!

タイトルの”ウィスキー”はなんのことだろうと思っていたが、これは顔写真を撮るときのかけ声。日本でいえば、”はい、チーズ”に相当していた。
偽夫婦になったふたりは、”ウィスキー”のかけ声で笑顔の写真を撮る。しかしその笑顔は、結局のところ作り笑いにすぎない。偽の笑顔。
これがこの映画の主題。

やって来た弟は小粋な伊達男で会話もウィットに飛んでいる。 マルタとの会話も弾む。
地味だったマルタは少しずつ華やいでいく。無表情だった顔に笑いが出るようになる。
しかしハコボは相変わらず浮かない表情で、全くノレテいない。
3人での小旅行に出かけるのだが、その雰囲気は変わらないままだ。

弟がブラジルへ帰っていき、偽装夫婦を演じた二人には、また元のような日常が戻ってくるはずだった。
はずだったのだが、変化が起きる。
あれ、そんな・・・?
いったいどうしてそんな行動を・・・?

最後まで力が抜けてしまうような、作り笑いの虚しさを残して映画は終わっていく。
それなのに、いつまでも尾を引く映画。ウルグアイ、なかなかやるなあ。

東京映画祭でグランプリ・主演女優賞を受賞し、カンヌ映画祭でもオリジナル視点賞・国際批評家連盟賞を受賞しています。