1970年 イタリア 102分
監督:ビットリオ・デ・シーカ
出演:ソフィア・ローレン、 マルチェロ・マストロヤンニ
人情喜劇。 ★★★
生活に少し漬かれたようなフィルメーナ(ソフィア・ローレン)が病に倒れるところから、物語がはじまる。
彼女の命が幾ばくもないことを医師から知らされ、ドメニコ(マルチャロ・マストロヤンニ)は彼女と知り合った22年前のことを回想する。
娼婦と裕福な遊び人男の22年にわたる愛憎劇。
娼婦が恋愛ドラマにからんでくるものといえば名作「あなただけ今晩わ」、ラブ・コメの「プリティ・ウーマン」などが思い浮かぶ。
それらに比べて、この映画はコメディ・たちを残しながらも、デ・シーカ監督だけあって押さえるところは押さえて、きっちりとシビア。
人間の描き方が真面目で、さすがに「自転車泥棒」を撮ったデ・シーカだと思わせる。
娼婦だったフィルメーナがひたすらドメニコを愛しているのに対して、ドメニコはいい加減なお調子者。
フィルメーナを家政婦やメイドとして利用したりして、「都合のいい女」としてしか考えない。なんて身勝手な奴なんだ。それでいて本質的なところでは優しさを残している。
愛すべきダメ男の典型みたいな奴だな。
しかし、どんなことがあっても泣きはしないと自分に言い聞かせて頑張って生きる女は、強く、したたか。。
そして、その強さがいじらしく、可愛い。
ドメニコの酷い扱いに甘んじながら、フェルメールはじわりじわりとドメニコの生活に食い込んでいく。
そして、大芝居を打って結婚にまでこぎ着けるのだが、彼女がどうしても結婚したかったのには大きな訳があったのだ。
ローレンが華やかで美しい。
前半は娼婦という役柄もあってそれこそ男を魅了する華やかさにあふれている。
次第に生活がのしかかってくるとその華やかさがくすんでいくあたりが巧み。
そしてドメニコと別れたあとに静かな美しさがまた蘇ってきている。
あんな美しさを見せられたら、そりゃあどんな男でも未練が残るというもの(笑)。
映画全体の感じが落ち着いていて、雰囲気を持っている。
戦後の町並みが復興していくのが眼下に見える丘の上で二人が話し合う場面が、印象的.
さすがにデ・シーカ、ローレン、マストロヤンニの黄金トリオの作品。
ドタバタと笑わせるところも織り交ぜながら、しっかりと魅せてくれます。
大したものです。
さて、次は同じトリオの悲恋もの、「ひまわり」を観ようかな。