監督:ビットリオ・デ・シーカ
出演:ソフィア・ローレン、 マルチェロ・マストロヤンニ、 リュドミラ・サベーリエワ
戦争による悲劇。 ★★★★
「ああ結婚」に続いて、デ・シーカ、ローレン、マストロヤンニの黄金トリオを観る。
ヘンリー・マンシーニのあのテーマ曲が流れ、ロシアの広大なひまわり畑の映像が映しだされる。
戦争によって引き起こされた夫婦の悲劇が切ない。
幸せな新婚生活からソ連戦線にかり出された夫アントニオ（マルチェロ・マストロヤンニ）が復員しない。
一途に夫を愛していた妻ジョヴァンナ（ソフィア・ローレン）は、広大なロシアの地へ夫を探しに行く。
しかし、夫は、瀕死だった自分を懸命に助けてくれた女性マーシャ（リュドミラ・サベーリエワ）と新しい家庭を持っていたのだ。
印象的な場面はいくつもある。
悪ふざけのような新婚生活の楽しい場面と対比されるような、過酷な雪のソ連戦線での場面。
ジョヴァンナがやっと尋ね当てた家で、アントニオの清楚な妻と子どもを見る場面。
そして、駅のホームで仕事から戻ってきたアントニオの姿を見たジョヴァンナは、そのまま身を翻して汽車に飛び乗ってしまう。
意を決してイタリアまでやって来たアントニオとジョバンナの再会場面も印象的。
おりしも嵐で停電していて、ほの暗いろうそくの明かりの中で、二人は齢を重ねたお互いの顔を見る。
お互いの顔は暗い。
そして停電がなおり灯りがつく。やはり辛い現実と向きあわなければならない。
アントニオも、ジョヴァンナも辛い。
そしてアントニオをイタリアへ送りだしたマーシャも、どれほど辛かったことか。
もしかすれば、二度と夫が自分の元へ帰ってこないかもしれないと、たぶん思いながらアントニオを送りだしたのだろうから。
みんな真剣に人を愛している。
それなのに、誰が悪かったわけでもないのに、こんな悲劇が起きてしまっている。
直接的に戦争の残酷さを描いているわけではない。
しかし、戦争が残した残酷な運命を描いて、強く反戦のメッセージも伝えてくる。
最後の場面、一夜があけたミラノ駅での、おそらくは二度と会うこともない別れを静かにあらわしている。
この映画の悪口は受け付けませんよ、という気分。
