あきりんの映画生活

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「ウェディング・バンケット」 (1993年)

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1993年 台湾 106分
監督:アン・リー
出演:ウィンストン・チャオ、 ミッチェル・リヒテンシュタイン、 メイ・チン

ドタバタとしながらもじんわりと来る人間ドラマ。 ★★★☆

NYで暮らすゲイの台湾人青年と、その恋人である白人青年、そして彼と偽装結婚する中国人女性との人生ドラマ。
アン・リーが初期に撮った”父親三部作”の二作目に当たる。

ゲイである台湾人青年ウェイトン(ウィンストン・チャオ)は、マンハッタンで恋人のアメリカ人・サイモン(ミチェル・リヒテンシュタイン)と暮らしている。
しかし、ウェイトンがゲイであることを知らない両親は、早く結婚するようにとうるさい。
一方、芸術家のウェイウェイ(メイ・チン)は、、アメリカ滞在のビザの期限が切れようとしていた。

アン・リーはゲイの愛について関心が深いのだろうか。高評価だった「ブロークバック・マウンテン」でも取りあげていた。
もともと”ゲイもの”はちょっと苦手なのだが、この映画ではサイモンがとにかく好い奴だったので、気持ちよく観ることができた。

見合いの話をつぎつぎに持ってくる両親を安心させようとして、ウェイトンはウェイウェイと偽装結婚をすることにする。
これでウェイウェイも永久居住権をもらうことができるし。めでたしめでたし。
のはずだったのだが、両親は息子の結婚式にアメリカへやってくるという。
えっ、これは困ったぞ。
しかも、役所で書類を提出して済ませるつもりだった結婚式は、なんと本格的な結婚式をすることになってしまう。
ますます困ったぞ。

この結婚式(披露宴だが)、これが台湾式というのか、とにかく賑やか。
飲めや歌えやの大騒ぎ。異文化を観るのは大変に面白い。
しかも、式が終わって新婚の二人が引きあげた部屋に友人たちが大挙して押しかける。
台湾式って、こんなのか?

部屋の中で酔っ払いながら勝手に麻雀を始めるわ、騒ぎまくるわ、もう大変。
挙げ句の果ては、新婚の二人にベッド・インまで強要する。もう大変。

こうして物語の筋だけ説明するとまるでコメディ調なのだが、なかなかどうして、人情ドラマをしっかりとしている。
それというのも、台湾からやって来た両親、特に寡黙なお父さんが好いんだなあ。
軍隊の師団長まで務めたという堅物なのだが、多くを語らずに息子を見つめる眼差しが終始温かい。

(以下、結末までのネタバレがあります)

ベッドインはまねごとだけのはずだったのに、あれあれ、大変な結果になってしまう。
僕以外の、しかも女性とセックスをするなんてと、裏切られたサイモンは怒るし、どうしてくれるのよとウェイウェイは怒るし、1回だけの過ちをしたものの、もとより女性を愛せないウェイトンは困惑するし・・・。
さあ、どうするんだ?

皆でテーブルを囲んでいる食事中に3人が英語で言い合う場面がある。両親には分からないだろうと思って。
英語のわからない母親は、なぜ3人が言い争っているのか判らない。
私たちが迷惑をかけているのかしら、と心配したりする(善良なお母さんだ)。

ところが、実は父親は英語が分かっていたのだ。
父親はウェイトンがゲイであるという真の姿も、現在の状況も知ってしまうのだ。
あとになってサイモンは、父親が実は知っていたことをを知る。
しみじみ深い味わいがある。

誰も悪い人が出てこない。
みんな、良かれと思って行動している。
そして困難な状況の中でそれぞれが相手をなんとか受け入れようとしている。

未婚の母になろうと決心するウェイウェイ。
ゲイの息子を認めてやろうとする両親。
生まれてくる赤ん坊の父親に一緒になろうとするウェイトンとサイモン。

初期のアンー・リー作品はしみじみとした人生の情感がよく描かれていて、好いなあと思ってしまう。
このシリーズの第三作「恋人たちの食卓」も、実に好い味わいでした。
この作品はベルリン映画祭で金熊賞を受賞しています。