あきりんの映画生活

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「息子の部屋」 (2001年)

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2001年 イタリア 105分
監督:ナンニ・モレッティ
出演:ナンニ・モレッティ

息子を失った家族の再生ドラマ。 ★★★

とても静かな映画。流れる音楽も穏やかに、ゆっくりと流れる。
傷ついた心が回復するのには、ゆっくりとしたこんな時間の流れが必要だったのだろう。

精神科医のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は、妻、娘、息子と、小さな問題ごとはあるものの、平穏な生活をしていた。
浜辺から街中をジョギングして、健康的な汗を流すことを日課としているような生活だ。
しかしある日、息子のアンドレアが友達と出かけた潜水中に事故で死んでしまう。

落ち着いた色合いでの画面は、ていねいに撮られていることがよくわかるような、そんな落ち着きがある。
物語の進み方も、突然に家族を襲った悲劇を声だかに描くのではなく、それぞれが心の中に抱え込むように耐えていく様として描いている。

父は、事故の当日に息子と一緒にジョギングをしようとしていたのだが、患者からの急な電話で往診に出かけていかざるをえなかった。
家に残った息子は友達と潜水に出かけ事故に遭う。
もし自分が往診を断って息子と一緒にジョギングをしていたら…。父は自分を責めつづける。

そんな日々に、精神科医の仕事とはいえ、患者の悩み事を辛抱強く聞くことはかなり辛かったろうと思える。
悩んでいるのは自分の方なんだと、どこにも出せない不満やイライラがつのったことだろう。
そりゃあ、医者だって病気にはなる。辛いよなあ。

家族もそれぞれに悲しい。
みな、自分の哀しみの中に閉じこもっている。会話も、思いやりも、いつしかぎくしゃくとしてくる。

息子の部屋は、亡くなった後もいつまでもそのままになっている。
映画の始めに息子が窃盗容疑をかけられる事件が起きている。信じている息子なのだが、父親はそっと息子の部屋の中を確かめたりする場面があった。
息子の死後、父親が再びその息子の部屋へ入る場面がある。
全く異なった感情を抱いて息子の部屋へ入るのだが、その対比が父親の感情をよく表していた。

そんな哀しみのある日に、亡くなった息子あてに女の子からの一通の手紙が届く。
それは息子が生前に知り合っていたガールフレンドからのものだった。
そして、ヒッチハイクの途中のガールフレンドが、恋人と一緒に家を訪ねてくる。
息子にもガールフレンドがいたということで、息子の人生の意味が受け入れられるようになったのだろう。
残された家族に息子の死を受け入れる気持ちができはじめるような感じで、映画は終わっていく。

静かな映画だが、じんわりとしたものが観ている者の気持ちに浸みてくる。好い映画だ。
ナンニ・モレッティは、原作、監督、主演とこなしている。才人なのだろう。
カンヌ映画祭パルムドール賞を受賞しています。