あきりんの映画生活

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「そして、デブノーの森へ」 (2004年)

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2004年 フランス 109分
監督:ロベルト・アンド
出演:ダニエル・オートゥイユ、 アナ・ムグラリス

不倫サスペンス。 ★★★

義理の息子の結婚式に出席するためにフェリーに乗ったダニエル(ダニエル・オートゥイユ)は、そこで美しい女性ミラ(アナ・ムグラリス)と知り合う。
ミラに誘われるように関係を持ってしまったダニエルだったが、息子の結婚式場で出逢った花嫁は・・・。

こうしてはじまる義理の父娘の不倫関係。
不倫ものなので、ちゃんと濃密な濡れ場もある。
しかし、この映画がただの不倫ドラマに陥っていないのは、不倫関係を舞台設定として展開されるサスペンスがしっかりしているから。
これは本格ものではないか! 意外に奥行きも感じさせて、思わぬもうけものの作品だぞ。

ヒロインのミラを演じる抜群のプロポーションアナ・ムグラリスは元モデルとのこと。
シャネルの専属モデルだったらしい。劇中でもフェンディとシャネルをまとって(衣装協賛とのこと)、そのミステリアスな雰囲気と共に実に魅せてくれる。
この人、プロポーションももちろん好いのだが、なんといっても目に力がある。
こんな目で見つめられて、あなたのことを考えていた、なんて言われたら、そりゃ引きずり込まれるわな(笑)。

彼女に対するのは、「あるいは裏切りという名の犬」で渋い貫禄をみせていたオートゥイユ。
だが、ムグラリスのあまりにも謎めいた美貌の前では、ファム・ファタールに翻弄されるただの中年オヤジに見えてくる。
それほどにムグラリスの雰囲気がよい。

ダニエルは、実は謎の覆面作家として成功していたのだが、そこにはある過去が陰蔽されていた。
そしてミラとの禁断の関係を秘かに知った人物から、二人の密会場面を隠し撮りした写真とともに脅迫状が届く。覆面作家が誰か、その正体を知っているぞ、と。
いったい、誰が?
しかし、名前を隠していたのはダニエルだけではなかったのだ。

タイトルにあるデブノーの森はポーランドにあり、ユダヤ系の人たちの墓地があるらしい。
墓石の上に石を載せる仕草を、ダニエルもミラもしていた。
(「シンドラーのリスト」でも同じような仕草が見られた。)
あの仕草には、(ユダヤ民族に特有の)なにか特別な意味があるのだろうか?

サスペンスとして、もう一ひねりぐらいあるかなと思ったりもしたが、さすがにそこまで複雑な筋立てにはしていなかった。
しかし、作品の雰囲気を楽しむのにはちょうど良いぐらいだった。
セリフは極端に少なく押さえられていて、主人公たちの動作、そして視線で感情を伝えてくる。
サスペンス感とフランス映画らしい雰囲気とのバランスがとても好いのだ。

それほど有名ではない作品ですが(私が知らなかっただけ?)、なかなかに満足させてくれる1本でした。