あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。1800本余りの映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。

「甘い罠」 (2000年)

イメージ 1

2000年 フランス
監督:クロード・シャブロル
出演:イザベル・ユベール、 アナ・ムグラリス

犯罪心理ドラマ。 ★★★

先年亡くなったクロード・シャブロル監督の後期の作品のひとつ。
シャブロルは”フランスのヒッチコック”と言われていたらしいが (ヌーベル・バーグの旗手の一人でもあったらしい)、私にはヒッチコックとはかなり趣が異なっているように思えた。

冒頭は、有名なピアニストのアンドレと後妻となるミカ(イザベル・ユベール)の結婚式場面。
その席上で、出席者たちはアンドレの先妻の不審な事故死のことなどをひそひそと語っている。
なにか不穏な空気が漂っている。なにか幸せばかりではない予感を感じさせている。

シャブロルの映画は登場人物の心理描写が、とても曖昧なところがある。
何を考えてそんな行動をしたのか、測りかねるところがある。説明不足というのではなく、自分でも心の整理が付かないままに行動してしまっている人間を描いているのだろう。
それが独特の不気味さ、人間の心理の恐ろしさをかもし出している。

アンドレとミカのところへ、あるきっかけからピアニスト志望のジャンヌが通ってくるようになる。
親しく指導するアンドレ。一生懸命にピアノを習うジャンヌ。
そんなジャンヌを愛想よく歓待しているように見える(歓待しているように振る舞う)ミカ。

ジャンヌは先日観たサスペンス映画「そして、デブノーの森へ」で印象的だったアナ・ムグラリス
やはり眼に独特の力がある。印象的な女優さんである。

対するミカは言わずとしれたイザベル・ユベール。
この人があらわれて、ただの人であるはずがない(苦笑)。登場してくるだけで何かあるぞと思わせる雰囲気をプンプンと発散している。

ミカがわざとこぼしたホット・ココア。本当に睡眠薬は混ぜられていたのか?
ミカが執拗に毛糸で編んでいるストールは、獲物を絡めとろうする蜘蛛の巣の模様(原作は「見えない蜘蛛の巣」というらしい)。
くりかえし奏でられるリストのピアノ曲「葬送」・・・。
劇的な事件が起きるわけではないのだが、映画全体が大きな事件のなかで揺れているようなのだ。

ラストで犯人の告白がおこなわれる。
いわゆる未故の殺意というものか。
しかし、動機は、なんと、無い。純粋殺人なのだな、これは。
ここにきて、この映画は社会的な次元で描いたミステリーではなく、人間の本質的なところでの犯罪を描いたものだったのだと、思わされる。

シャブロルの独特の雰囲気に絡めとられる。一度魅せられると、妙にくせになりそう。
地味なミステリーをお捜しの方へ、お勧めです(笑)。