1995年 フランス 111分
監督:クロード・シャブロル
出演:イザベル・ユベール、 サンドリーヌ・ボネール
心理的サスペンス。 ★★★
フランスのヒッチ・コックと言われたクロード・シャブロル監督。
カンヌではパルム・ドール賞を2回とっているし、ベルリンでは金熊賞も取っている。
この映画は、毎年のように新作を発表していたシャブロル監督65歳の時のもの。
副題は「ロウフィールド館の惨劇」。
平穏な家庭に次第に忍び寄ってくる不穏な空気感が、とても不気味。
ヒロインはどこか謎めいているし、彼女が親しくなった女友達はどこかキレているし・・・。
裕福な家庭に住み込みの家政婦ソフィー(サンドリーヌ・ボネール)が雇われてくる。
ソフィーの真面目な仕事ぶりは完璧で、特に料理も上手。
夫婦はもちろん、息子と娘も、家族は皆満足している。
前半はそんなソフィーの仕事ぶりが淡々と描かれる。
寡黙な彼女なのだが、ところどころ、あれ? 不思議な行動をする。
奥さんが留守をするときに用事を頼んだメモを残していく。
ソフィーは素知らぬ風を装ってそのメモを床に落とす。それを拾い上げた娘は、「あら、ママからの伝言よ、アイロンをお願いって」。
またある日は、食材が足りなくなったからこのリストの品を注文しておいてね、と、奥さんから頼まれる。
ソフィーは、「家の電話が壊れたの」と言ってそのリストを持って知り合った女友達の元へ行き、代わりに注文してもらう。
はて? ソフィーのこの不可解な行動の意味は?
ソフィーが知り合う女友達がイザベル・ユベール。
このユベールの切れっぷりが半端ではない。
ガムをくちゃくちゃと噛みながら村の人たちを馬鹿にして罵倒し、感情のままにふるまう。
こんな人物が近くに住んでいたら、たまらんぞ。
訳あり女とイカレ女が、次第に常識のたがを外していく・・・。
副題からはいずれこのお屋敷では惨劇が起こることが予告されている。
いったい、誰が、どんな理由で、どんな惨劇を起こすのだ?
(以下、ネタバレ)
失読症という病期はあまり知られていないが、有名人にもこの病期の人はかなりいるとのこと。
本人にとっては絶対に人には知られたくない秘密だったのだろう。
だからといって、こんな行動に出るか? やはりどこか狂っている・・・。
人の内側でじりじりとした狂気が育っていくよう。
シャブロル監督作品は5編ほど観ているが、これが一番面白かったかな。