1957年 フランス 92分
監督:ルイ・マル
出演:モーリス・ロネ、 ジャンヌ・モロー、 リノ・バンチェラ
息づまるようなサスペンス。 ★★★★
25歳のルイ・マルの初監督作品とのこと。
この若さのデビュー作でこれだけの作品を作ったのだから、さすがと言うほかはない。
社長夫人(ジャンヌ・モロー)との不倫関係にあるモーリス・ロネは、ついに意を決して社長殺害を企てる。
アリバイ工作をおこない、窓から忍び込んで殺人をおこなった社長室を密室に仕立て上げる。
無事に事を終えたらモローと落ち合う約束をして・・・。
なんといっても全編に流れるマイルス・ディビスのトランペットが素晴らしい。
たまたまフランスに滞在していたマイルスは、映し出されるフィルムを見ながら、フランスでのリズム陣をしたがえてその場で即興演奏をおこなったという。
この映画の魅力は、このマイルスの緊迫感溢れる演奏で引き立てられていることは間違いない。
ちなみに、私の好きなシネマ・ジャズのベスト3 といえば、この「死刑台のエレベーター」に「タクシー・ドライバー」「ラスト・タンゴ・イン・パリ」である。
ぶじに殺人を終えたロネだったが、ちょっとしたミスに気づき、犯行現場に戻ろうとする。そして動かなくなったエレベーターに閉じ込められてしまう。
その間に、路上駐車をしていたロネの車を若い不良カップルが失敬してドライブに出かけてしまう。そしてこのカップルは・・・。
この映画の真骨頂は、単に殺人事件の顛末にあるのではない。
それよりも、エレベーターに閉じ込められたロネの焦燥感、そして行方が判らなくなったロネをさがして、一晩中、夜の街をさまようジャンヌ・モローの焦燥感を、突き刺さるような緊迫感で伝えてくるところに、この映画の魅力がある。
しかし、よく考えれば犯行自体にはドジなところも多い。
だいたいが、上の階に忍び込むために使った綱を置き忘れるか? (それに、あの綱を下から外すときはどうするつもりだったのだろう?)
それに、人に見つからないように(未だ警備員がいるのだから)上の階に行くのだったら、階段を使うだろ、普通は?
堂々とエレベーターなんか使うから、”死刑台の”になってしまうんよ(笑)。
ま、しかし、これはどちらも物語の展開には必要なことだから致し方ない(苦笑)。
ま、いろいろと細かいことを書きましたが、そりゃあ良くできた映画です。
くり返しになりますが、息詰まるような緊迫感が映画全体に漂っています。この突き刺さるような感じはなかなか他の映画では味わえません。
サスペンスものとして、1度は観ておくべき作品でしょう。
まだ若く見えるリノ・バンチェラが刑事役で出ています。