1963年 フランス
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル、 セルジュ・レジアーニ
出演:セルジュ・レジアニ、 ジャン・ポール・ベルモンド
フレンチ・ノワール。 ★★★
メルヴィル監督はアラン・ドロンと組んでノワールの傑作を撮ったが、本作はベルモンドと組んだもの。
タイトルの“いぬ”とは警察への密告者を指す。
そういえば、少し前の映画に「あるいは裏切りという名の犬」というのもあった。
出所したばかりのモーリス(セルジュ・レジアニ)は、仲間と一緒に次の強盗を企てる。
しかしその情報は警察に洩れており、仲間は撃ち殺されてしまう。
誰が警察に密告したのか?
以前から警察と通じていると噂のあるシリアン(ジャン・ポール・ベルモンド)が”いぬ”なのか?
ベルモンドといえば、二枚目ドロンとよく比較されて、どちらかといえばコミカルな役どころも多かった。
しかし、この映画のベルモンドは、若さもあって、瑞々しくクールなたたずまいで魅せてくれる。
物語は、重傷を負って意識不明になったモーリスを誰かが助けてくれていたり、その彼の愛人が殺されたりする。
そしてシリアンのかっての恋人は、今は暗黒街の大ボスの愛人になっていたりする(でも、今もシリアンのことを想っていたりする)。
このように、かなり物語は錯綜するのだが、モノクロの画面は美しく緊迫感を伝えてくる。
さすがにメルヴィル監督である。
(以下、ネタバレ)
ラスト、誤解による悲劇が起ころうとする。
俺を助けてくれていたのは、シリアン、お前だったのか。そんなこととも知らずに俺は・・・。
悲劇を必死に止めようとするモーリス・・・。しかし。
瀕死となったシリアンは、必死に最後の電話を恋人にかける、「フェビエンヌ、今夜は会えない・・・」。
フレンチ・ノワールの渋い雰囲気がすみずみまで浸みています。