1990年 フランス 99分
監督:イブ・ロベール
抒情的な少年もの。 ★★★
しまった、続編を先に観てしまった。
「プロヴァンス物語 マルセルの夏」に続くのが今作だった。失敗した、残念。
物語は、成長した主人公マルセルが少年の日々を回想するモノローグとともにすすむ。
前作でマルセルは夏休みを美しいプロヴァンスの田舎で過ごしたのだったが、その日々が忘れられない。
で、父母に懇願して、家族で週末の休暇を田舎へ出かけて過ごすようになる。
厳しいが人間味溢れる学校教師の父、美しく優しい母、愛すべき弟。
少年だった日々は、なんとなつかしいものであることか。その美しさのなんとはかないことか。
何か重大事件が起こるわけでもなく、ただ田舎へ歩いていく道のりを近回りしようと、よその家の庭をこっそりと横切っていくという (ちょっとした) 冒険が描かれているだけだ。
それなのに、少年にとっては忘れられないような冒険の日々だったのだ。
マルセル達がこっそりと忍び込む貴族の庭園には、運河が流れ、荘厳なお城が建っている。
ある日、一家はそこの怖い番人に見つかり、のっぴきならない事態に陥ってしまう。
しかし、父のかっての教え子達の機転によってその事態もぶじに解決できる。よかった、よかった。
物語としてはこれだけなのである。
しかし、風景はいやが上にも無垢で美しく、マルセル達一家の心も純真でほほえましい。
清々しいものを観ることができる。
そして・・・、最後の10分間足らずにその後の家族のことが語られる。
美しい母、愛らしい弟、大事な友だちであったリリ・・・。
少年だった日々のなんと美しくはかないことか・・・。
そして、成人したマルセルは、あの恐い番人のいたお城と再びめぐりあうのである。
大袈裟なところはこれっぽっちもない小品。
それなのに、なんという余韻を残す物語であったことか。
かえすがえすも、続編を先に観てしまったことを後悔している(悲)。
「夏」が先ですよ。