2007年 フランス 137分
監督:ジャック・リベット
出演:ギヨーム・ドバルデュー、 ジャンヌ・バリバール
19世紀舞台の文藝もの。 ★★☆
バルザックの小説を映画化したもので、19世紀初頭のパリの上流社会が舞台。
だから登場する屋敷は貴族の豪華なところばかり。
男性も女性も服装は優雅できらびやか。
庶民なんて(主人公たちに仕える小間使いや召使い以外は)これっぽっちも登場しない。
住む世界が違う人々の物語。
だから、展開がもったいぶっているとか、感情が理解できないとか、そんなことを言っていてはいけない。
これはそういう世界の人々の物語であるということを了解の上で楽しむ映画。
ランジェ公爵夫人(ジャンヌ・バリバール)はパリ社交界の華。
そんな彼女がナポレオン軍の英雄モンリヴォー将軍(ギヨーム・ドバルデュー)に興味を抱き、思わせぶりな言動ですぐに彼を魅了して翻弄する。
無骨な将軍は恋の虜となり、なされるがまま。
純情な男の一途さが、観ている者にはいささか情けなくも見えてくる。
ついに、捨て鉢になった将軍は夫人を誘拐し、自分のものだという焼き印を彼女の額につけようとする暴挙に出る。
すると、(ここが女心の不可解なところなのだが) この将軍の蛮行が夫人の心を一転させる。
そして夫人が将軍を熱烈に求め始めたとき、皮肉にも、将軍の心は夫人を捨て去ることを決意してしまっていた。
こうして物語は悲劇へとつきすすんでいく。
あまりにも格調高く、身を焦がす恋の駆け引き。
我が国の文学で言えば、源氏物語にでも匹敵するような上流社会の男女の物語。
なのだが、リヴェット監督の、大好きだった以前の作品、「北の橋」 や 「セリーヌトジュリーは舟でゆく」 に比べると、非常に真面目に撮ったのだなあと、いささかがっかりした面もある。
遊び心いっぱいだったヌーヴェルバーグの巨匠も老齢になり、どっしりと落ち着いたのか。