あきりんの映画生活

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「ザ・セル」 (2000年)

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2000年 アメリカ 109分
監督:ターセム・シン
出演:ジェニファー・ロペス

サイコ・サスペンス。 ★★★☆

冒頭の、ジェニファー・ロペスが優雅な真っ白い衣装で砂丘を歩いて行く場面から魅了させられる。
空はいよいよ蒼く、砂丘幾何学的な模様を描いている。
大自然の美なのに、人工的なアート美のようにも感じられる。この場面からしてすごい。
これがうわさに聞くターセム・シンの美意識か! 並みじゃない!

心理学者キャサリンジェニファー・ロペス) は、他人の精神世界に潜り込み、精神疾患を治療していた。
そのころ、若い女性を誘拐、溺死させるという猟奇連続殺人事件が起きていた。犯人は逮捕されたのだが、女性を秘密のアジトで巨大水槽に閉じ込めたまま意識不明の状態になってしまった。
早く彼女の居場所をつきとめないと、時限装置によって彼女は溺死してしまう。

という設定で、キャサリンが殺人鬼の脳内世界に入り込んでいく。
脳内世界を描くのだから、なんでもありのわけで、こういう設定こそ作り手の美意識、想像力が問われる。
この作品がターセムの初監督作で、ジェニファー・ロペスも初主役だったとのことだが、見事な出来映えだった。

一頭の馬が、生きたまま垂直に10ほどのパーツに分断される場面。馬の断面図が連なっている。
犯人に殺された女性達が、異様な服装、あるいは白塗りの裸体姿で部屋に監禁されていたりする場面。
悪の権化が四方のカーテンのような布地をずるずるとひきずる場面。

悪夢のような脳内世界を彷徨わせてくれる。
石岡瑛子が衣装特別を務めていて、アラベスクを思わせるようなキャサリンの衣装も印象的だった。

この世界では、「マトリックス」でもそうだったが、脳内世界で傷つくと現実世界の肉体も傷つくという設定になっていた。
ビジュアルもすごかったが、物語にはいろいろな暗喩 (たとえば「水」とか、「白色」とか) がちりばめられていた。
それらがからみ合って、聖書、あるいは神話をなぞったのではないかと思われる魂の救済の物語にもなっていた。

それにしても、他人の脳内世界に入っていくか、それとも、自分の脳内世界に他人を呼び寄せるか。
どちらも発狂しそうだなあ。