あきりんの映画生活

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「落下の王国」 (2006年)

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2006年 インド 118分
監督:ターセム
出演:リー・ペイス、 カティンカ・アンタルー、 ジャスティン・ワデル

ファンタジー。 ★★★

前作「ザ・セル」で圧倒的な美を見せつけてくれたターセム監督の2作目。
映画は二重構造になっていて、現実世界での青年と少女の交流と、青年が少女に話して聞かせる冒険物語が平行して綴られる。
なんといっても、世界24カ国でロケをおこなって創りあげたという映像美が素晴らしい。

スタントマンのロイ(リー・ベイス)は撮影中の事故で入院中。身体も自分では動かせない状態。
腕を骨折して入院中の5歳のアレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)は、好奇心旺盛で院内を歩きまわり、ロイと知り合う。
ロイはアレクサンドリアに思いつきの冒険譚を語って聞かせる。

冒頭にモノクロの映画フィルムが映し出される。
ロイがスタントをしていた映画らしいのだが、この映像からしてすでに物語しているのである。
そして、ロイが語って聞かせるのは、それぞれに傷心の6人の男たちが力を合わせて一人の悪総督に立ち向かうという荒唐無稽な空想物語。

現実離れした光景に見えるのだが (象が海を泳ぐ場面すらある)、CGはまったく使われていないとのこと。
8つの世界遺産でもロケをしている。
インドのタージマハールやアグラ城、カンボジアのアンコールは今年訪れてきたところだが、画面で見るとあらためて美しい遺跡だと思ってしまう。

登場人物たちの衣装は、今作でも石岡瑛子が担当している。
オリエンタルな雰囲気で奇抜な衣装は色鮮やかで華麗、幻想的ですばらしいとしか言いようがない。

空想物語の登場人物が、それぞれ現実世界の出演者であるところに、気がつくとにやりとさせられる。
たとえば、物語の姫は現実世界の美人看護師だったり、氷の配達人があの人だったり・・・。
スーダンの円形舞踏も効果的に現れていた。

それに、ヒロインの女の子がまったく美人でないところが好いんだろうなあ。
小太りで、顔つきはまるで大相撲の某といったら、あまりにかわいそう?
何でも彼女は、ロイ役の青年が本当に歩けないのだと思い込んで本気で同情していたとのこと。

実はロイには自殺願望があり、少女を手名付けて自分では取れない薬品棚の麻薬を持ってこさせようという魂胆があったのだ。
悲劇で終わるはずだったロイの語る物語は、しかし、少女の望みによって幸せなエンディングへ向かう。
それとともに、自殺願望だったロイの気持ちにも変化が訪れる。

とにかく凝りに凝った映画です。
映像たるものがどこまでの表現をもてるのか、一度は観ておいてよい作品でしょう。