あきりんの映画生活

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「冬の華」 (1978年)

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1978年 日本 121分
監督:降旗康男
出演:高倉健、 池上季実子、 田中邦衛倍賞美津子

情感あふれるヤクザ映画。 ★★★☆

脚本が倉本聰、監督が降畑康男で、主演が高倉健とくれば、これはもう水準以上の作品が約束されたのも同然。
今回は再見だったが、やはり良かった。

やむにやまれぬ義理渡世から人を殺した加納秀次(高倉健)は、15年の服役から出所してくる。
その間、殺した相手の幼い娘の援助を加納は子分(田中邦衛)を通じて密かに行っていた。
ブラジルにいる叔父ということになっている加納は、美しく成長した少女(池上季実子)に対面しようとはしない。

少女の父親を殺したのが自分だという責めをどこまでも負い続ける加納。
寡黙な男を演じて、高倉健の本領が発揮されている。

その一方で、堅気になろうとした加納は恩義ある組長が謀殺されたことからふたたび争いの中に踏み込んでいく。
それは、決して自分が望んだ道ではないのに、義理人情のためにやむを得ず行かなければならない道。東映ヤクザ映画の王道。

それは、現代に蔓延している自己保全を優先させた我が儘な行動とは真逆の道。
自分が損をすることがわかっているのに、それでも選び取る道。

こう書くとベタな展開に思えるのだが(事実、そうなのですが)、さすがに倉本の脚本、降旗の演出は、そこに十分な情感を絡ませてくる。
一時流行ったVシネマなどとは一線を画したヤクザ映画となっている。

冒頭で、砂浜で刺し殺された父親の元へ、何も知らずに走り寄る幼い女の子が持っていた風車がくるくると回っている。
映画の最後の場面に重なるように、その場面がふたたび映し出される。
ただただ風の中で回り続ける風車が、空しい悲しみをよく表していた。

高倉健主演作では「駅Station」とならんで好きな作品。