あきりんの映画生活

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「掌の小説」 (2010年)

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2010年 日本 80分
監督:坪川拓史、 三宅伸行、 岸本司、 高橋雄弥
出演:吹越満、 香椎由宇

川端康成の短編小説を描いたオムニバス。 ★★☆

ノーベル文学賞を受けている川端康成は短編小説の名手であった。
そんな川端のごく短い小説、掌編小説を集めたのが「掌の小説」。全部で122編あるのだが、その中の4編を、それぞれ20分程度で撮ったオムニバス映画。

掌編小説であるから、物語の筋はあるようでないような。
物語が描かれるというよりも、物語のある場面が切りとられて差し出されるといった趣である。
物語のイメージを優先した映像詩という趣。

どれも大正から昭和初期と思われる年代を背景にして、ノスタルジックな風景が展開される。
ガラス戸からわずかな陽が差し込む畳の間、
「足が寂しがるのでなでてください」という病弱な妻、
下駄を履いた男の子のチャンバラごっこ
ボンネット・バスに乗って娼館に売られていく少女。
ジンタのように演奏される「天然の美」、

4つの作品に共通しているのは、忍び寄る死、そして咲き誇る桜、である。
桜は、おうおうにして太宰治が引き合いに出されるように、その華麗な盛りの花が一斉に散っていくように、死を伝えてくる。
どの作品にも凧を揚げる老人が映る。その老人も第4話で死んでいく。

夏目漱石の「夢十夜」を映画化した「ユメ十夜」は、内容が奇天烈な夢だけに、各監督の想像力の競演が面白かった。
こちらは静かな情景の映画化なので、その情感をいかに出すかの競演だった。

ノスタルジックな雰囲気は悪くなかったのだが、やや平板だったかな。