1963年 アメリカ 147分
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ジャック・レモン、 シャーリー・マクレーン
ラブ・コメディの傑作。 ★★★☆
娼婦を題材にした映画と言えば、「ティファニーで朝食を」、「プリティ・ウーマン」、それにこの映画がすぐに思い浮かぶ。
どれも豊かな人間ドラマとなっている。
娼婦というものの存在には首をかしげてしまうのだが、たしかに男女の情愛の機微があらわれやすいのだろう。
ジャック・レモン扮する世間知らずの警官ネスターは、パリの娼婦街で一斉検挙をおこなってクビになってしまう。
心惹かれた娼婦のイルマ(シャーリー・マクレーン)を苛めるヒモを叩きのめしたネスターは、代わりに彼女のヒモになる。
ジャック・レモンは、好い人なのだけれどもどこか少し情けない主人公を好演。
愛するイルマが他の男を客にとることなんて、とても耐えられない。
しかし、底抜けに明るいイルマは、愛するネスターが少しでも良い思いができるように、もっともっと頑張って仕事をするわ! あなたには働かせないわ! それが私の甲斐性よ!
この相手を大事に思うふたりの気持ちのすれ違いが、嫌みの無いユーモアとなっている。
ネスターは、イルマの気持ちを傷つけずに、しかも他の男を客として取らなくていいようにする一計を思いつく。
なんだ、自分が客になって彼女を借り切ってしまえばいいじゃないか!
というわけで、ネスターは大金持ちのX卿に扮してイルマに近づく。
すっとぼけていて、ネスターのよき理解者で、ほら話のどこまでが本当なのかも判らないバーのマスターが好かった。
マスターのほら話や、X卿のでたらめ話には、いたるところに映画ネタがちりばめられていて、知っているネタが出てくると楽しめる。
最後の結婚式の場面は、ジャック・レモンがまずはX卿の出で立ちであらわれて、それから変装をはぎとってネスターだったと明かす、というオチに持って行ってほしかったなあ。
ベタすぎるかもしれないが、この映画はそれでいいと思ったのだが・・・。
ワイルダー監督の艶笑コメディの傑作です。
ところでこの映画、当初はヒロイン役にマリリン・モンローを予定していたとのこと。
でも、モンローではあまりに生々しすぎて、大人のおとぎ話といったこの映画の雰囲気は出ていなかっただろうと思える。
マクレーンのほんわかとした雰囲気で成功だった。
ところで、娼婦を扱った映画の特異な愛情ものとしては、モニカ・ベルッチの「ダニエラという女」をあげておきたい。
あ、もう1本、ゴダール監督にはアンナ・カリーナの「女と男のいる舗道」という傑作もあった。