2012年 アメリカ 127分
監督:アン・リー
出演:スラージ・ジャルマ
サバイバル・ドラマ。 ★★★☆
映画紹介を読んだときは、海の上を虎と一緒に漂流する物語、ということだった。
きっと主人公と虎の間に友情が生まれて、二人で(一人と1匹か)助け合いながら困難を乗り切っていくのだろうな、と思っていた。
違った、全然違った。虎はあくまでも野獣だったのだ。
映画は、インド人であるパイが小説のネタ探しをしていた作家に漂流物語を語るという設定で提示される。
パイが16歳のとき、一家でカナダに移住するために乗った貨物船が嵐に遭遇する。
船は沈没し、パイが乗り移った救命ボートにはシマウマ、ハイエナ、オランウータン、そして虎が乗ってくる。
パイ一家は動物園を経営しており、動物たちと一緒に貨物船に乗っていたのだ。
人間も含めた動物の世界では弱肉強食が当たり前。
救命ボートという閉ざされた世界でも、その当たり前のことが起こる。
弱いものは食べられ、強いものだけが生き残る。
ボートにはパイと虎だけとなる。
この映画の特徴的なところは、その大部分が大海原に漂うボートだけが舞台であり、パイと虎だけが物語の登場人物だということ。
限られた舞台で限られた登場人物ということになれば単調になるはずのところだが、緊張の連続。
パイは虎とともに漂流していく術を必死に工夫する。なるほどなあ。
そして、この動物たちはすべてCGで描かれたとのこと。すごいリアル感である。すごい技術である。
ということは、主人公のスラージ・ジャルマって、すごい演技力だなあ。
途中で、夜になると”人食い”となる島に漂着する部分がある。
その場面はとても幻想的であった。
しかし、その分だけパイの語る物語が現実から遊離していることにもなる。パイの語っている物語って・・・。
事故調査のためにパイの話を聞きにきた調査員は、そんな話はとても信じられない、と言う。
それでは、とパイはもうひとつの物語を話して聞かせる。
(以下、ネタバレ)
さすがにアン・リー監督である。
単なる冒険譚では終わらせていなかった。最後にそうきたか。
そうだったのか。
どうしてライオンと一緒に漂流することができたのか? ・・・パイがライオンだったから・・・?
ライオンになってしまった自分と一緒に、必死に漂流していたのか。
辿り着いた島でライオンが後ろも振り向かずに密林に消えたのは、パイが自分の中のライオンと決別したからだったのか。
・・・とも思わせてくる。
パイが語ったふたつの物語のどちらを信じるかは、実際に映画を見た人に委ねられている。
私はどちらの物語かというと、そりゃあ、・・・・・。