2011年 日本
監督:園子温
出演:染谷将太、 二階堂ふみ、 神楽坂恵、 黒沢あすか、 吹越満、 でんでん
絶望的な青春。 ★★★★
破綻した物語、戯画的に誇張された登場人物たち。
リアリティからは離れたところで物語は展開される。
それなのに、このインパクトはどうだ。園監督のあの「愛のむきだし」にも通じる迫力がこの映画にはあった。
タイトルの「ヒミズ」は、おそらくモグラの一種である”日不見”から来ているのではないか。
暗い地の中を、必死に土をかき分けて生きていくしか術を持たないものなのだろう。
この映画の主人公を観ていると、園監督がこのタイトルをつけた感覚はよく伝わってくる。
15歳の住田祐一(染谷将太)の夢は、誰にも迷惑をかけない平凡な大人になること。
しかし彼を取りまく環境は生やさしいものではなかった。
多額の借金を残して失踪している暴力的な父親、男と酒に明け暮れている母親。
彼は河辺の貸しボート屋で必死に暮らす。
とにかく、園監督の作品のご多分に漏れず、この作品も重く、神経が痛められる。
こんな理不尽なことばかり続いて、主人公はどうやって生きていく希望を見いだせるのだと思ってしまう。
救いとなるのは、そんな住田に好意を抱いて勝手に世話を焼きに来る同級生の茶沢景子(二階堂ふみ)の存在。
そして貸しボート屋の周りに暮らすホームレスの人たち。
弱者が助け合って暮らそうとするのだが、問答無用の暴力はそれを赦そうとしない。
脚本も出来上がっていたときに3・11東日本大震災が起こった。
園監督は脚本を大幅に変更して、被災地である石巻市での映像も挿入している。
登場人物のひとりの背景にもそれを被せている。
このように、自分の感じたものを破綻など気にせずに作品にぶち込むところがその作品の迫力につながってるのだろう。
強者と弱者、善と悪、親と子、罪と罰・・・。
それらの本質に関わる部分を肥大化させて誇張させて、園監督は物語を作り、映像化してくる。
始めにも書いたが、そのためには、リアリティなどくそくらえ!といった地点に立っている。
(あんなきれいなお姉さん(神楽坂恵)がホームレスで、しかもいつも真っ白なきれいな服を着ているなんて! ありえな~い!)
物語は狂気となって突き進んでいく。
どこまで行ってしまうのかと、呆気にとられるほど。
最後、茶沢景子の「ガンバレ!」という声と共に、二人は走る。
それは、死ぬな、生き続けろ、というメッセージだったのだろう。
当時は無名に近かった染谷将太と二階堂ふみは、ヴェネチア国際映画祭で新人俳優賞を取っている。
二人そろって、というのはすごいことだな。