1987年 香港 98分
監督:メイベル・チャン
出演:チョウ・ユンファ、 チェリー・チャン
異郷での恋物語。 ★★★☆
これはなんとも雰囲気の好い映画。
ニューヨークの下町、ブルックリンでの香港人カップルの初心な恋物語。
もう、今時こんなピュアなカップルがいるか?と歯がゆくなるほどだが、そこが好いんだなあ。
演劇の勉強をするためにニューヨークにやって来たジェニファー(チェリー・チェン)。
この地には恋人のトニーもいて、自分を待ってくれているはずだった。
ところが、トニーには新しい恋人ができており、ジェニファーは遠縁のサンパン(チョウ・ユンファ)を頼らざるを得なくなる。
このサンパンは博打とお酒でその日暮らしをしているような男。
しかし、面倒見が良く皆からは慕われている。いわば下町の兄貴分。
底辺の生活をしているのにとても心優しい。そして純情。
そんなサンパンを演じているチョウ・ユンファが実に好い。
ジェニファーが好きでたまらないのだが、元カレに気を使ってしまったりもする。
繊細に心が揺れ動いている。
(ジェニファーがトニーにフラれたことを知ったサンパンは、自分の部屋の壁に「サンパンがあなたを愛してる」と思わず書くのだが、恥ずかしくなって「サンパン」を消して「誰か」と描き直す。これが邦題になっている)
あの爪楊枝咥え両手拳銃乱れ射ちの「男たちの挽歌」とはかなり雰囲気が違うぞ。
ヒロインのチェリー・チャンは初めて観た女優さんだが、こちらもいい。
しっかりとした信念を持って自立した知的女性。
はじめはサンパンのいい加減さに呆れていたジェニファーだったが、次第に彼の優しさに惹かれていく。
異郷のニューヨーク、それもブルックリン橋を渡る列車の轟音が響くような下町で暮らす香港人の生活が、細やかに描かれている。
これも哀愁のようなものを誘う。
ジェニファーは、サンパンと一緒にいると心が安らぐのだけれども、彼とは住む世界が違う、とも感じている。
二人の恋はどうなる?
ラストは原題通りに“秋の童話”のような展開となる。
半ば予想していた結末とはいえ、やはりほのぼのとして、嬉しくなってくる。
ラブ・ストーリーはこうでなくては、ね。
メイベル・チャン監督はこのあと、あの壮大な史実を絡めたドラマ、「宋家の三姉妹」を撮っています。