2009年 アメリカ 125分
監督:ロドリゴ・ガルシア
出演:ナオミ・ワッツ、 アネット・ベニング、 サミュエル・L・ジャクソン
母と娘の物語。 ★★★☆
先日、生後すぐに養子に出された女性が生みの母を捜し続ける物語「めぐりあう日」を観た。
この映画も、同じような状況に置かれた母娘の物語である。
カレン(アネット・ベニング)は14歳で妊娠してしまい、母親によって生後すぐに赤ん坊は養子に出されてしまう。
それから37年が経ち、今はその母親を介護しながら、人に心を開くこともなく療法士として生活していた。
一方、里親とも早くに死に別れてしまった37歳のエリザベス(ナオミ・ワッツ)は、弁護士として成功していた。
しかし、彼女もまた頑な心で、キャリアの上昇志向だけで、他人を必要としないような生き方をしてきた。
映画はこの母娘の様子を、交互に捉えていく。
それぞれに辛い過去に縛られて、今も辛い。
でも、その過去に向きあって何かを変える気持ちにもなれない。そんな生き方が納得できるように描かれる。
そこに、不妊症で養子をもらいたいと望んでいる若い黒人夫婦のエピソードも挟み込まれる。
だから映画は、オムニバス風にカメラが切り替わって物語を描いていく。
やがてカレンとエリザベスそれぞれに、それまでの生き方を変えるような事態が生じてくる。
そのときに二人はそれぞれに自分の娘、自分の母を捜し出そうとする。
果たして二人は会うことができるのだろうか。
実は、カレンの母親が亡くなっていくのだが、その母親もカレンに悪いことをしたと、後悔し続けていたのだ。
しかし、そのことをカレンに直接詫びることはなかったのだ。
あとで母のその心情を知ったカレンは、どうして私にその言葉を言ってくれなかったのかと泣き崩れる。
これはいつまでも辛いよなあ。
結局、三組の母子問題が描かれている。
それぞれに辛い思いを抱いていた登場人物たちを淡々と描きながら、しみじみとした、どこかほんのりと温かいものを感じさせて映画は終わっていく。
最初はバラバラだったこの三組が、最後に(一人はどうにもならないのだが)運命のように巡り逢うのだ。
この映画の制作指揮は、あのアレハンドロ・イニャリトゥ。
「めぐりあう日」は個人的にはあまり合いませんでしたが、こちらは素直に観ることができました。
さすがに「彼女を見ればわかること」のロドリゴ・ガルシア監督でした。
(ネタバレの余談)
後半にエリザベスが妊婦腹を見せる場面がある。
あのリアルさをどうやって撮ったのかと思っていたら、なんとナオミ・ワッツは本当にこのとき妊娠していたのだそう。
すごい女優魂だな。