2010年 韓国 144分
監督:キム・ジウン
出演:イ・ビョンホン、 チェ・ミンシク
復讐バイオレンス。 ★★★☆
韓国映画である。覚悟して観る必要がある。
なにしろタイトルに”悪魔”と、堂々と書いてあるのだから、並大抵ではないだろうと、覚悟して観る必要がある。
国家情報員スヒョン(イ・ビョンホン)の婚約者が何者かに惨殺される。
怒りに燃えたスヒョンは、元刑事だった婚約者の父の協力を得て、残虐な殺人嗜好の犯人ギョンチョル(チェ・ミンスク)を探しあてる。
ここからのスヒョンの復讐方法がすごい。
スヒョンは見つけ出したギョンチョルを徹底的に痛めつけ叩きのめす。
しかし、殺すことはしない。警察に突き出すこともしない。
追跡用のGPSカプセルを飲み込ませて、そのままギョンチョルを解放するのだ。
スヒョンの怒りの凄まじさは、恨みの犯人の苦痛を1回では終わらせないわけだ。
ギョンチョルが新たな凶行に及ぼうとするたびにスヒョンは先回りしては、彼に容赦のなく制裁を加える。
今回は腕の骨を折ってやるぞ。どうだ、痛いか、苦しいか。
今度はアキレス腱を切ってやるぞ。どうだ、痛いか、苦しいか。
イケメン爽やかヒーローのイ・ビョンホンが、今作では何かに取りつかれたような狂気の主人公を演じている。
そう、ここまで来れば、もう狂気としかいいようがない。
しかし、ギョンチョルも怖ろしい人間なのである。
スヒョンのリンチとも言える痛めつけに屈するどころか、ますますその残虐さを増していくのである。
ギョンチョル役のテェ・ミンシク、さすがに「オールド・ボーイ」で主役を張っただけのことはある。
なるほど、韓国映画だ。
韓国映画の凄まじいところは、そのバイオレンスぶりにあるのだが、肉体的なそれもさることながら、精神的な凄まじさである。
人間の心がそこまで凄まじくなれるものなのか、ということを突きつけてくる。
(以下、ネタバレ)
結局、スヒョンが常軌を逸した復讐を試みたばかりに、義父も義妹もギョンチョルに殺されてしまった。
悲劇を、スヒョン自身の悲しみを大きくしただけではなかったか。
そして、スヒョンが最後にとった復讐の方法も、惨い。
それはギョンチョル自身ではなくて、彼の両親や息子にとって惨いことであったことが、惨い。
果たしてそんなことに意味があったのか。
見えてしまった悪魔はギョンチョルではなくて、スヒョンだったのかもしれない。
”悪魔”は決して幸せはもたらしてはくれない。