2015年 フランス 100分
監督:サミュエル・ベンシェント
出演:イザベル・ユベール
オフ・ビートなコメディ。 ★★★☆
フランス郊外の古い団地を舞台に、偶然に出会った3組の男女が描かれる。
奇妙な筋立ての映画なのだが、 物語性が破綻しているわけではない。
しかし、力が抜けるような、なんだ?これ? といったものや、だからどうなん? といった感じではある。
そんな映画だということはあらかじめ知っておいた方が途惑わなくて済むだろう。
古い団地のエレベーターが壊れてしまったので住民は費用を出し合って修理することになった。
しかし2階に一人暮らしの中年(ダサ)男は、俺はエレベーターなんか使わないよ、だから修理費なんか出さないよ。
どこにでも一人は居そうなへそ曲がり。協調性のない人物。
結局、彼はお金を出さない代わりにエレベーターを使用できないことになる。
ところがその直後に彼は足を怪我して車椅子生活になってしまう。ありゃあ。
一人暮らしの彼はエレベーターに乗らないとどこにも出かけられない。ありゃあ。
そこで、彼は誰にも見つからないように深夜になるのを待って、エレベーターに乗り、近くの病院の自動販売機に食べ物を買いに行くのである。
身から出た錆で滑稽なのだけれども、なんとも悲哀にも満ちている。
彼はそんな深夜の病院で休憩の煙草を吸っている看護師と出会う・・・。
2話目。
母親がいつも留守にしている少年シャルリの物語。
ある日、向かいにかっては女優だった中年女性(イザベル・ユベール)が引っ越してくる。
昔の彼女の主演映画をビデオで一緒に見たりして、あげくは彼女のオーディション売り込みのビデオ撮影を始める・・・。
3話目は一番奇想天外な物語。
団地の屋上にNASAの宇宙飛行士を乗せたカプセルが不時着する。
最上階に住むアルジェリア系移民の一人暮らしのマダムは、NASAに頼まれて、彼をかくまうことになる。
言葉も通じない二人のぎごちないけれども、なんだかほんわりとした共同生活が始まる・・・。
舞台は同じアパートで、3つの物語は交互に描かれる。
しかし、これらの物語が交差することはない。
それぞれの物語が、奇妙な内容なのに、何でもないことのように、それぞれにつまらなさそうな表情で終わっていく(苦笑)。
それがこの映画の持ち味である。
実は私は、もっと物語性も破綻している内容を期待していた。
たとえば、ロイ・アンダーソンのような、もっと説明不能な不条理な物語を期待していた。
その期待感からすると、ちょっとまともな物語りすぎたかな(苦笑)。
派手なアクション映画とも、情感あふれる文芸映画とも、正反対の映画です。
雰囲気でいえば、ジャームッシュ監督の作品をフランス風にした、といえば、イメージが伝わるでしょうか。
独特のゆる~い感じがあります。
好きな人にはとても受けると思います。