あきりんの映画生活

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わたしは、ダニエル・ブレイク」 (2016年)

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2016年 イギリス 100分
監督:ケン・ローチ
出演:デイブ・ジョーンズ、 ヘイリー・スクワイアーズ

社会的弱者は・・・。 ★★★

社会派監督として知られるケン・ローチ監督。
これまでも社会の底辺の人々を温かく見守るような作品を撮ってきたとのこと。
私はというと、これが初めてのケン・ローチ体験。

舞台はイギリス北東部。
長年大工として働いてきたダニエル・ブレイク(デイブ・ジョーンズ)は、ある日、心臓病が発症し、医者から仕事を止められてしまった。
独り暮らしの彼だったが、国の援助を受ける手続きのために役所を訪ねる。

日本でもかってのお役所仕事と言えば、非能率的、高圧的態度、杓子定規な対応、などの代名詞だった。
お世辞にも一般民衆に開かれているとは言えなかったが、最近はかなり好くなってきた印象がある。
さて映画に出てくるイギリスのお役所仕事。
これは酷い。医者が仕事を休めと言っているのに、いや、あなたは働けるから申請は受理できません。
これ、どういうこと?

このダニエル役の俳優は映画初主演とのこと。
しかし、実に自然。もうまったく役柄その通りの人物がそこにいるよう。
そして彼が職業安定所で知り合うのがシングル・マザーで困窮しているケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)。
彼女もオーディションで選ばれたとのこと。
ケン・ローチ監督って、役者の使い方が上手い。リアルに現実を伝えてくる。

貧しくても人間としての誇りだけは失わない、それが核心となる。
タイトルは役所の冷たい対応に怒ったダニエルが、壁に書いた文句である。
この”わたしは、ダニエル・ブレイク”には、自分は名前を持った一人の人間である、書類に埋没する記号としての存在ではない、ということを言っているのだと思う。

ダニエルの隣人のいい加減な若者も、案外好い奴であったり、役所の中にもダニエルを助けてくれようとする人がいたり。
決して冷たいばかりの社会ではない。
こういう助け合う手をさしのべる人たちが増えて、それが社会のシステムとして機能するようになるのが理想ではあるのだが。

ストレートに問題点を取り上げている作品。
カンヌ国際映画祭で二度目のパルム・ドールを受賞しています。