1987年 西ドイツ 128分
監督:ヴィム・ベンダース
出演:ブルーノ・ガンツ、 オットー・ザンダー、 ピーター・フォーク
ベンダースの映像詩。 ★★★
天使は何をしている存在なのだろう?
というか、なんのために存在しているのだろう?
この映画はそんなことも思わせる、天使たちの静かな物語。
天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)は人間の様々な心の呟きを聞いている。
そんな彼は、永遠の命を持った存在であることに負担を感じてもいるようだ。
そして、いっそう人間になりたい、と親友の天使カシエル(オットー・ザンダー)に告げたりもする。
天使のいる場面はモノクロで、人間だけが映っている場面がカラーとなっている。
ということで、前半はモノクロの画面で描かれる。
絵柄は重く暗い雰囲気なのだが、とても印象的な場面ばかり。
中でも、天使たちが高い建物に鳥のように停まって下界を見下ろす場面は、詩的な映像であった。
天使カシエルは、辛い現実に直面している人々を、見ている。
時代的に、ユダヤ人の問題も挟み込まれたりしている。
人間には見えない天使たちが会う図書館の場面もよかった。
やがてダミエルは、サーカス小屋で空中ブランコをしているマリオンに恋をする。
天使が人間に恋をして天使を止める、というところを取りだしてリメイクしたのが「シティ・オブ・エンジェル」だった。
ニコラス・ケイジとメグ・ライアンの、あちらはまったくの(普通の)ラブ・ファンタジーだった。
(しかも、悲劇!)
面白いのはピーター・フォークの存在。
TVドラマ「刑事コロンボ」で人気者となっているフォーク本人という役柄。
彼は見えないはずのダミエルに、そこにいるんだろ、気配で分かるんだ、と話しかけてくる。
実は彼もかっては天使だったのだというオチが付いていた。
ダミエルは人間の女性に恋をして天使を止めたのだけれども、恋はひとつのきっかけだったのではないだろうか。
彼は触れることも味わうこともできない(モノクロの)天使の有り様から、すべてを自ら体感できる(カラーの)世界に来たかったのだろう。
ただ見るだけの存在から、自ら実践する存在へ。
壁が崩壊する前の西ドイツの社会情勢を考えたりすると、そんなことも考えてしまう。
考えすぎ?
(独り言)
以前に観た時はもっと評価は高かった。
今回は★3つとなった。この映画、観る時の精神的状態でかなり評価が変わるような・・・(汗)。