あきりんの映画生活

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「悲しみよこんにちは」 (1957年)

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1957年 イギリス 94分
監督:オットー・プレミンジャー
出演:ジーン・セバーグ、 デビッド・ニーブン、 デボラ・カー、 ミレーヌ・ドモンジョ

JKが垣間見た大人の世界。 ★★☆

原作はフランソワーズ・サガンが18歳の時に書いた同名小説。
世界的なベストセラーとなり、サガンの退廃的なその世界に、高校生だった私も没入していた。

映画は、裕福な遊び人の父親と一緒に享楽の日々を送る18歳のセシル(ジーン・セバーグ)の回想形式をとっている。
セシルは1年前の明るい夏の日に、父が再婚しようとした女性アンヌ(デボラ・カー)を死に追いやってしまったのだ。
それからは、うわべは何気なくふるまっていても、悲しみがつきまとっているのだ。

映画は、悲しみに囚われている現在はモノクロで、まだ悲しみを知らなかった過去の回想部分はカラーで撮られている。
この使い分けは成功している。

サガンの描く物語は、裕福な社交世界での恋の駆け引きがその大半を占める。
この処女作の主人公は、受験(バカロレアというフランスのセンター試験のようなものらしい)を控えた少女。
背伸びをして大人の社交生活に入っている少女の、不安定な心の揺れが事件を呼び起こしている。

ヒロインを演じたジーン・セバーグの、男の子のような髪型はセシル・カットと呼ばれて、これもかなり流行したはず。
父の愛人にコケティッシュミレーヌ・ドモンジョ。そして父が再婚しようとする堅い女性アンヌにデボラ・カー。
この二人の対比もよく描かれていた。

シャンソンの大御所、ジュリエット・グレコが雰囲気のある同名の主題歌を歌っている。
映画の出来は悪くはない。
ラストの、セシルがいつまでも顔にクリームを塗り続ける場面は秀逸だった。

しかし、個人的に原作小説への思い入れがとても強いので、映画の評価はそれほどのものとはならなかった。
これはまったく個人的な事情によるもの(汗)。

朝吹登水子訳の原作の冒頭は、
「ものうさと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、立派な名を付けようか、私は迷う。」
そして最後は、
「自動車の音だけがしているパリの明け方、私の記憶が時として私を裏切る。(略) 何かが私の内に湧きあがり、私はそれを、目をつぶったままその名前で迎える。悲しみよ、こんにちは。」
こんなすばらしい小説をわずか18歳で書いてしまったなんて!
そういえば、先年、サガン自身を描いた映画もできていたのだった。