2017年 イギリス 117分
監督:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーナンド、 サム・ロックウェル、 ウディ・ハレルソン
社会派ドラマ。 ★★★☆
なんとも分類の難しい映画である。
はっきりとした悪役が登場するわけではない(物語上はいるのだが、映画には登場しない)。
しかし皆それぞれに必死なのだ。誰に感情移入する?
一筋縄の映画ではない。深い。
アメリカの田舎町で娘を暴行殺害された母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、ある日、暴行現場に3枚の立て看板を出す。
犯人は何故捕まらないの? 警察は何をしているの? 署長は無能よ。
ミルドレッドに名指しで抗議された所長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)は、真面目で街の人を思っている基本的に好い人。
それはミルドレッドにも分かっている。
しかもウィロビーは末期癌の状態であることを、街の人はみんな知っていた。
そんな彼を責めるのは可哀想よ、彼女の気持ちも分かるけれどあれはやりすぎよ。彼女は何を考えているのかしら。
ウィルソンの部下のディクソン巡査(サム・ロックウェル)。彼が憎々しげな奴。
公然とミルドレッドへの怒りを露わにする。脅しともとれる嫌がらせもする。
しかも人種差別を平然とやるような奴。
嫌な奴だよなあ。ロックウェル、上手い。
かといって、ミルドレッドに共感できるかといえば、そんなこともない。
娘を殺された彼女はあまりに頑なである。
どこにぶつけたらいいのか自分でも分からない感情を、他者の思いやりを拒否してまでも、自分勝手に発散しているようなのだ。
物語が進むにつれて、ディクソン巡査はますます横暴ぶりを発揮する。
しかし、彼も一人の人間なのである。
後半、彼は意外な方向に変わっていき、おお、そういう行動を取るのか、と思わせる。
それが突飛でもなく、なるほど、そういう人間性もあるだろうな、と思わせるところがこの映画の深みである。
事件がすっきりと解決するというような、そんな安易な展開にはならない。
最後、ミルドレッドとディクソンは一台の車に乗ってあるところへ向かっている。
そうか、ここで映画は終わっていくか。やるなあ。
フランシス・マクドーナンドがアカデミー賞の主演女優賞、サム・ロックウェルが助演男優賞を取っています。
二人とも納得の演技でした。