2017年 日本 125分
監督:是枝裕和
出演:福山雅治、 役所広司、 広瀬すず
法廷サスペンス。 ★★★☆
これだけ着実なヒットがつづくと、つい気になってしまう監督となった是枝裕和。
いつもの家族ものとは違っての法廷もの。
しかし、さすがに魅せてくれる。面白く撮っていた。
重盛(福山雅治)は、一筋縄ではいかない三隅(役所広司)の弁護をいやいや引き受ける。
三隅の容疑は、解雇された恨みから工場の社長を殺し、遺体に火をつけたというもの。
しかも彼は30年前にも殺人を犯した前科がある。
こりゃ、あかんやろ。死刑判決が出るのは目に見えているぜ。
重盛は、三隅の量刑をせめて無期懲役に持ち込もうと努力する。
ところが、肝心の三隅がどうもはっきりしない。
証言を二転三転させ、いったい自分がどうなりたいのかが重盛にもわからない。
法廷ものでは、通常は謎が次第に解明されていくカタルシスを味わう。
しかし今作では逆に、三隅の供述の変遷から次第に謎が深まっていく。その面白さであった。
この映画では、なんといっても役所広司。
「孤狼の血」の彼もすさまじかったが、この映画での役所の怪物ぶりもすごかった。
それに、広瀬すずが上手い。
こんなに好い女優さんだとは思わなかった。すっかり見直した。
ただ不満もいくつかある。
重森の娘の万引きや嘘泣きのエピソードは、あのあと何もなし? そりゃないだろ。
咲江の不自由な足についての彼女の言葉も、あれは本当?
それとも重森の娘の涙と同じように、嘘?
娘の嘘泣きを見せておいて、最後に重森の涙を見せるか?
余分だった気が・・・。
それに、思わせぶりな十字架の印は何?
キリスト教を絡ませなくてもよかったのでは。
映画のラストシーンは、重森が十字路に立ちつくす姿だった。
彼もまた十字架を背負った?
結局、三隅は殺人犯だったのか、殺人犯ではなかったのか。
映像的には犯人だと思わせる作りになっていたが、はっきりとは明かされずに映画は終わっていく。
咲江の罪を被ったというのは、あまりにも荒唐無稽の感じがしてしまうのだが・・・。
冤罪で死刑になる三隅が”三度目の殺人”の被害者?
どう?
いろいろと書いたが、とても重厚な見応えのある作品だった。