あきりんの映画生活

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「歓楽通り」 (2002年) 君が幸せになるために僕はつくすよ

2002年 フランス 91分 
監督:パトリス・ルコント
出演:パトリック・ティムシット、 レティシア・カスタ

無償の愛、倒錯的な愛。 ★★★

 

母が娼婦のプチ=ルイ(パトリック・ティムシット)は娼館で生まれ、パリの娼館の中だけで育ってきた。
彼は娼婦たちの世話役として生きてきたのだが、そんな彼の夢は、運命の女性にめぐり会ってその彼女のために一生を捧げることだった。

 

ある日、彼はついにその運命の女性に出会う。
それは新入りの娼婦マリオン(レティシア・カスタ)。彼女はどこか薄幸の影をまとっている。
それからのプチ=ルイは彼女を幸せにすることだけを願って世話を焼いていく。

 

パトリス・ルコントの描く恋物語はどこか捻れている。
代表作とも言える「仕立て屋の恋」の男の恋心は、ここまで執着する恋心なんて、と判るような気もするし、とてもついて行けない気もするし、という感じだった。
髪結いの亭主」や「橋の上の娘」になると、男だけではなく女の気持ちも捻れているようだった。

 

プチ=ルイはマリオンを幸せにするために彼女の“運命の男”を探し始める。
ね、捻れているでしょ。
好きになった女性を幸せにするために、彼女の恋人を見つけてあげるんだよ。普通の恋心じゃないよね、これ。

もっとも、この映画で描かれる男女の関係というのは、好き嫌いの次元を越えた”運命の相手”との巡り逢い。
それは恋なんてものは超越しているようなのだよ。

 

そして見つけた運命の男、ディミートリーとマリオンの仲を取り持つプチ=ルイ。
やっぱり普通じゃないよな。

 

プチ=ルイ役のパトリック・ティムシットは、小太りで中年の小男。
イメージとしては「仕立て屋の恋」の主人公と重なる。どこまで一途なんだ。

マリオン役のレチシア・カスタは、ラルフ・ローレンイヴ・サンローランなどのトップ・ブランドのモデルを務めた経歴を持つ。
なんでも、フランスの市庁舎に飾られているマリアンヌ像のモデルでもあるとのこと。へえ~。

 

で、歌手としての舞台デビューも果たしたマリオンが幸せになったかというと・・・。
運命の相手だったディミートリィが、実は疫病神だった。
マリオンを愛し抜いてくれているのだが、世間的には好からぬならず者。
これまた好からぬならず者に追われて命を狙われている状態。

 

映画全体は、プチ=ルイの少年期の映像をはさみながら(このあたりは「髪結いの亭主」に似た雰囲気)、彼の回想として描かれている。
回想される物語って、多くは悲劇だよねえ。

 

セックスとか、恋とか、そんなものは飛び越えた次元でひとりの女性に自分を捧げたひとりの男。
やはり捻れている。
このあと、プチ=ルイはどうやって生きたのだろうなあ。