あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「TITANE チタン」 (2021年) カー・セックスと言っても、「車で」じゃあないよ

2021年 108分 フランス・ベルギー合作 
監督:ジュリア・デュクルノー
出演:アガト・ルセル、 バンサン・ランドン

クローネンバーグ風の変態映画。 ★★★

 

幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガト・ルセル)。
それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱くようになる。
ついには、車に性欲を感じた彼女はめくるめくような車とのセックスをおこなう。
すごいね、もう完全にイッテしまっているよ。

 

さらにシリアルサイコキラーへとつきすすむアレクシア。
この衝動的な殺人にもついていけないよ。
それも次々に予想外の目撃者があらわれるものだから、彼女も次々に殺人をしなけりゃならないし・・・。このあたりはコミカルな展開でもある?

 

やがて行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセント(バンサン・ランドン)と出会い、奇妙な共同生活を始める。
ヴィンセントは彼女を10年前に行方不明になった息子だと思い込んだのだ。
乳房とお腹の膨らみを弾力包帯のようなもので締め上げて隠すアレクシア。もちろん髪は断髪した。

 

それにしても、いつもは美の象徴のような女性の裸体をこれほど醜悪な物として描いているのには驚いた。どんどん裸体がおぞましいものへと変容していくのだ。
女性監督でなければここまではできなかったのではないだろうか。
(男性はどうしても女体に美しい幻想を抱いてしまうという悲しい性を持っている・・・苦笑)

 

ヒロインを演じたアガト・ルスルという女優さん、すごい根性の持ち主だと感心する。
無名の俳優を起用したいとのデュクルノー監督の考えから、インスタグラムで発掘されたという。
中世的な容姿、雰囲気を備えていて、確かにこの映画には不可欠だった。

 

膨れたアレクシアのお腹にはときに裂け目ができる。
そこからは不気味な光沢を放つ金属の表面が見えるのだ。
車とのセックスで妊娠した彼女のお腹のなかには何か金属製の物が育ってきているようなのだ。不気味だな。

 

ファンタジーと言えばそうなのだが、そんな生やさしいものではない。
やがてアレックスの分娩の時が来る。
ヴィンセントに取り上げられた嬰児は布に包まれて直接その姿が映ることはない。ただ泣き声を上げている。
それが見るものの想像力をかき立てる。
そのヒステリックな泣き声にデヴィッド・リンチ監督の「イレイザー・ヘッド」で生まれてくる嬰児を思い出していた。

 

エロいというか、グロいというか、えげつないというか、気持ち悪いというか、とにかくぐったり疲れた。
その痛い感触は塚本晋也監督の「鉄男」にも通じていた。
映像もグロいのだが、差し出してくる気持ちが映像以上にグロいという感じ。
これぞ正真正銘の変態映画。苦手な人はいるだろうな。

 

カンヌ映画祭はこの映画にパルムドールを授賞している。
さすがカンヌ。米国アカデミー賞とは違う評価基準の懐が深いな。