あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「黒猫・白猫」 (1998年)

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1998年 フランス 130分
監督:エミール・クストリッツァ

力強く騒々しいコメディ。 ★★★★☆

舞台はユーゴスラヴィアの田舎町。
マトゥコは博打やいい加減な儲け話に乗っては損をしてばかり。
ついに新興ヤクザのダダンに貨物列車強奪計画を持ちかけるが失敗して莫大な借金まで背負ってしまう。
困り果てたマトゥコは息子のザーレをダダンの妹アフロディタと結婚させることにする。

独特の土着的な力強さと、どこまでも物語が突き進んでいく破天荒ぶりで魅了してくれるエミール・クストリッツァ監督。
アンダーグラウンド」も好かったし、最新作の「オン・ザ・ミルキ-・ロード」も傑作だった。

この映画も人々の生活と共にあるドナウ川の流れのように、どこまでも進んでいく。
そしてアヒルは走り回るし、家の屋根はぶっ飛ぶし、踊りまくるし、お祭りさわぎの騒々しさが続く。楽しい。

実はザーレにはイダという恋人がいた。
ダダンの妹なんかと結婚するつもりはないぞ。こうなりゃ、イダと一緒に逃げだそう!
ダダンの妹(低身長だが芯は強い好い娘)もヤクザの兄が勝手に決めた結婚なんかしたくない。
私は結婚式場から逃げ出すわよ。

全編でジプシーの楽団の陽気な音楽が鳴り響き、人々は踊りまくっている。
悪巧みをする人物もあらわれるが、どこか滑稽なのだ。
貧しくても悩みがあっても、歌と踊りと酒があれば、今はそれでいいぞ!
ハチャメチャに展開する映画なのだが、とにかく楽しい。
この映画、どこまで行ってしまうのだ?

結婚式から逃げだす花嫁。もちろん式場は大混乱。
逃げだした(低身長の)花嫁はノッポの男に助けられる。
運命的な出会いのふたりはその場で結婚を約束してしまう。

実はこのノッポ男の祖父はジプシー世界を牛耳るゴッドファーザーだった。
チンピラヤクザのダダンなど、まったく頭が上がらないような存在。
そのゴッドファーザーはザーレの祖父とも親友で、めでたく二組のカップルが誕生する。

と、もうてんやわんや。
ザーレの祖父は一度は死んだのに生き返るし、ザーレは思わぬ大金を祖父からもらったりもする。
登場人物たちはとにかく走り回るし、楽団は木にぶら下がって、軽快な音楽が人々のあたふたぶりを追いかける。
楽しいなあ。

この陽気な毒気に当てられると、抜け出せなくなりますよ。
ヴェネチア映画祭で監督賞・銀獅子賞を取っています。

「男と女、モントーク岬で」 )(2017年)

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2017年 ドイツ 106分
監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演:スタラン・スカルスガルド、 ニーナ・ホス

別れた恋人たちの再会は ★★☆

ポルト」に続けて男と女の逢瀬の物語。
ただこちらは17年前に別れた元恋人たちの再会。
男と女は、相手との再会にそれぞれ何を求めていたのか。映画の惹き文句は「今ならもっと上手に愛せるのでしょうか」と意味深長(苦笑)。

ドイツの作家マックス(ステラン・スカルスガルド)は、新作のキャンペーンでニューヨークを訪れる。
彼はそれなりに成功した作家のようで、いろいろな場所で自作の朗読をして廻っている。自著へのサイン会にも列ができる。
そんな彼は17年前にこのニューヨークでレベッカ(ニーナ・ホス)と恋をして、そして別れていた。
彼女はどうしているのだろう? もう一度、彼女に会いたいぞ。

マックスを演じているステラン・スカルスガルドと言えば、「マンマ・ミーア」やマーベル・シリーズで活躍もしているが、印象的なのはやはりラース・フォン・トリア監督の作品群だろう。
特に、あの「ニンフォマニアック」。
印象としては、知識人で内省的、十分に常識をわきまえた大人の男性。
この映画では、初老を迎えようとしている男の自分勝手な思い込み、希望、欲望を、ああ、判るなあという感じで演じている。

一方のレベッカを演じるのは「東ベルリンから来た女」で印象的だったニーナ・ホス。
マックスが彼女の会社へ押しかけて再会する場面がある。
そのときのニーナ・ホスがすごい。
元々強い目力の女優さんだが、白のシャツに黒のタイトスカートできりりと大会社のビルから現れる。
マックスとの再会を拒否するような冷たい視線、態度。
彼女は大成功をした弁護士となっていて、高級マンションに住んでいたりもしたのだ。

マックスには事実婚の女性がいるのだが、なぜか、レベッカからモントーク岬への旅の誘いがくると、彼はほいほいと嘘をついて出かけてしまう。
モントーク岬はかっての二人の思い出の場所だったのだ。
もう一度レベッカとやり直せるのではないだろうか・・・。そうだったらいいなあ・・・。

男と女の恋心は複雑。
とはいっても、男は単純明快。過去の恋愛を引きずっていて、あわよくばもう一度と、自分勝手な期待を抱く。
判りにくいのが女心。
過去の恋愛は清算したのであれば、なぜマックスを旅に誘った? なぜ身体を重ねた?

モントーク岬の風景は美しい。
波と風が二人を押し包む。二人の心も波に揺らされ、風にあおられる。

この映画も、身勝手でどこか情けない男と、自分がいれば男は切り捨てられるという強さを持った女の物語だった。
何歳になっても初恋の相手を美化して思いだす男は沢山いるのではないかなあ(苦笑)。

「ポルト」 (2016年)

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2016年 ポルトガル 76分
監督:ケイブ・クリンガー
出演:アントン・イェルテェ、 ルーシー・ルカ

異国の地でのラブ・ストーリー。 ★★

舞台はポルトガル北部の港町ポルト
この街でひとり暮らしをしているアメリカ人のジェイク(アントン・イェルチェ)は、フランス人留学生マティ(リュシー・リュカ)と出会う。
二人は意気投合して濃密な一夜を過ごす。

この映画はジム・ジャームッシュ製作というだけあって、まったく覇気がない内容になっている。
ジャームッシュ作品の場合は、その覇気のなさが妙に居心地のよい気怠さを醸し出すのだが、本作は男の側のあまりの覇気のなさにイライラしてしまった。

誰かがこの映画の男女について、「女性の強さが男性を思い悩ませ、男性の弱さが女性を思い悩ませる」と描いていたが、なるほど、言い得て妙である。
一晩の恋を永遠と思って立ち止まってしまってそこから動けないでいる男と、ただの一晩の恋としてあっさりと通り過ぎる女。

ジェイク、マティ、ジェイクとマティという3章立てになっていて、時間軸も交差するが、それほど効果的ではなかった。
(というか、どの場面が最初の出会いで、どこからが再開の場面なのかが、とても分かりにくい。
だから、二人の心の揺れ動き方も捉えにくいものとなっている)
ジェイクはマティとの一夜が忘れられずに、うだうだと覇気のない生活を送る。
一方のマティは婚約者だったポルトガル人の教授と結婚して女の子を産む。そしてその結婚生活は破綻していく。

ヘタレなダメダメ男のジェイクは分からないでもない(なにせ、ヘタレだから 苦笑)。
分からないのはマティ。
頭脳明晰で婚約者もいながら、どうしてジェイクみたいな男の誘いに乗って一夜を共にしたりするのだ?

何年かして二人はポルトで再会したのかと最初は思っていた。
しかし、よく考えると、二人にはあの一夜だけがあり、その後の二人がそれぞれにあの一夜を思いだしているだけかもしれないと解釈した。
どうもそちらが正解なようだ。

ということで、物語自体はとりたてていうものではない。
ポルトという美しい港町を背景に揺れた男女の刹那の恋物語、ということだった。
異国の町での出会いと別れ、この雰囲気だけで満足できるか。どうか。
私は不満だった(汗)。

アントン・イェルチンは映画公開前に亡くなったようで、エンドロールで”彼に捧ぐ”とのコメントが付いていた。

「猟奇的な彼女」 (2001年)

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2001年 韓国 122分
監督:クァク・ジョヨン
出演:チョン・ジヒョン、 チャ・テヒョン

ラブ・コメディ。 ★★★★

なぜ、この映画が4つ星なのだ?と訝しがる人もいるだろう。
なぜなら私は、韓国俳優で知っている数人の中の一人、チョン・ジヒョンのファンなのだ(笑)。
(ちなみに、他に知っているのはイ・ビョンホンと、ヨン様ぐらい)

映画の惹き文句は、「凶暴なまでに勝ち気でキュートな女性に惚れてしまった、気弱な青年の奮闘をコミカルにつづる。」 うん、上手く要約されている。
なんでも原作はインターネットに投稿された体験談とのこと。へえ~。

優しい草食男子のキョヌ(チャ・テヒョン)は夜の地下鉄で“彼女”(チョン・ジヒョン)と出会う。
その時“彼女”は泥酔状態で、見かねたキョヌはホテルの一室で介抱してやる。
その日から”猟奇的な彼女”に振り回されるキョヌの日々が始まる。

この映画はなんといってもチョン・ジヒョンの魅力で惹きつけてくれる。
可愛い顔に似合わないような周囲の迷惑お構いなしの正義感が強い一直線女子。
年寄りに席を譲らないヤンキーには注意をするし、援交をしようとしているオジサンには噛みつくわ。

この外見と行動のアンバランスが楽しくコミカルに描かれる。
もちろん、彼女もその奥には繊細な悩みを抱えて苦しんでいるところが、また泣かせる。

お調子者で、そんな彼女に惹かれていくキョヌ役のチャ・テヒョンも好かった。
(ちなみに、この映画の大ヒットにあやかって作られたチョン・ジヒョンの「僕の彼女を紹介します」では、チャ・テヒョンは最後にゲスト出演している)

(以下、後半の展開に触れています)

亡くなった元カレへの思いをどうしても断ち切れなかった彼女。
そのために、二人は2年後の再会を約束して別れる。さあ、どうなるのだろう?
約束の日を待ちわびて丘に上るキョヌ。しかし、その日に彼女はあらわれなかったのだ。さあ、どうなるのだろう?

最後、なあんだ、そうだったんだ。
好かったね。

「ハングリー・ラビット」 (2011年)

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2011年 アメリカ 106分
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:ニコラス・ケイジ、 ガイ・ピアース

歪んだ必殺仕置き人集団。 ★★

まじめな高校教師の(ニコラス・ケイジ)。世間常識から外れるようなこととは無縁の男。
しかし、ある日妻のローラ(ジャニュアリー・ジョーンズ)連続レイプ犯に襲われ大怪我をおってしまう。
ああ、この怒りをどこへ向けたらいいんだ・・・。

そんなウィルに、サイモン(ガイ・ピアース)という男が接触してくる。
お前の代わりにレイプ犯を殺してやるよ。
なに、代金なんか要らないよ。そのかわり、後で簡単な頼みごとを引き受けてくれ。

とくれば、これは”天に代わって悪を討つ”必殺仕置き人ものである。
有名なところではチャールズ・ブロンソン扮するポール・カージー・シリーズがあった。
今回の独特な点は、仕置き人が一人ではなく組織として動いているところ。
そして仕置きを果たした見返りに、別の仕置きに手を貸せ、と要求してくるところ。

妻を襲った犯人はサイモンらによって殺される。
そしてサイモンはウィルに事故に見せかけた殺人をするように強制してくる。
あいつは幼児ポルノで金を稼いでいる悪人なんだぜ。あんな奴は殺さなければいけないんだよ。
えっ、あいつが悪人だったとしても、本当に私がそんなことをしなければいけないのか? どうしたらいいんだ?

(以下、ネタバレ気味)

普通は、仕置き人には仕置き人なりの正義がある。
それこそ警察が罰することができないでいる悪人を、絶対的な正義の下に罰するのである。
しかし、サイモンは違ったのである。
ウィルは、実はサイモンの悪巧みに利用されかけたのである。

後半は、無実の罪を着せられたウィルが警察に追われ、サイモンにも追われ。
考えてみればウィルはまじめな高校教師だったはず。
それなのに、いつのまにかセガール親父かリーアム・パパかというぐらいに強くなっている。
そんなの、ありかよ(苦笑)。

最後は、ああ、やっちゃったよ(誰が?)
この映画は終わっていくけれど、秘密組織の暗躍や、ウィル夫婦の物語は、これからどうなっていくのだろ?

「アリータ:バトル・エンジェル」 (2018年)

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2018年 アメリカ 122分
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ローサ・サラザール、 クリストフ・ヴァルツ、 ジェニファー・コネリー

サイボーグ美少女アクションもの。 ★★☆

諜報員ではないが、女性活躍もののお次はこれ。
脳以外の顔、身体、手足はすべて人工物、いわゆるサイボーグのアリータ(ローサ・サラザール)がヒロイン。
原作は「銃夢」という日本のコミックとのこと。

上流富裕層が暮らす天空都市と、下層庶民が暮らす地上に分かれた未来社会。
天空都市からは廃棄物が地上に捨てられ、堆積している。
そんな廃棄物の中からまだ生きている脳を見つけたサイボーグ治療医師のイド(クリストフ・バルツ)は、その脳に自分の娘のために作ってあった身体を取り付ける。
やがてアリータは、300年前に作られた戦闘サイボーグだったことが判ってくる。

とにかく驚いたのが、アリータの目の大きさ。コミック顔である。
サラザールの顔をどのように細工していたのだろう。
ここまでコミック顔に修飾すると、もうサラザールではないような・・・。彼女である必要性もないような・・・(苦笑)。

表情の変化もアニメ的。あのディズニー・アニメで観るヒロインの表情の感じである。
実写だと思って観ているので、そこがどうしても違和感として残ってしまった。
(で、評価も星半分ぐらいは低くなっている。)

イド役のクリストフ・ヴァルツがやはり好い。
彼はいつも思慮深く、深い人間味を感じさせる役柄が多い。元から備わった人徳がある?
この映画でも、アリータとの父娘的な感情を上手く伝えてきていた。

イドの元妻に冷徹な感じのジェニファー・コネリー
そういえば彼女はデヴィッド・ボウイと共演したあの「ラビリンス 魔王の宮殿:の少女だったんだ。懐かしい。

映像にはさすがにすばらしいものがあった。
アリータが使う機甲術という古武術のアクションや、モーターボールという競技場格闘球技の場面は迫力満点だった。
しかし、物語のものはこの手のSFものにはお馴染みの設定部分が多かった。

本作は序章のような感じで、これから続編が作られる雰囲気いっぱいの終わり方だった。
エンドロールになってから、監督がJキャメロンではなくてロバート・ロドリゲスだったことを知った。
へえ、そうだったんだ。

「アンロック/陰謀のコード」 (2017年)

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2017年 チェコ 98分
監督:マイケル・アプテッド
出演:ノオミ・ラパス、 オーランド。ブルーム、 トニ・コレット、 マイケル・ダグラス、 ジョン・マルコビッチ

女諜報員もの。 ★★☆

さてこちらの女諜報員は元CIAの女性尋問官アリス(ノオミ・ラパス)。
彼女はかっての爆破テロ事件を防ぐことができなかったことでトラウマを抱えており、上司ラッシュ(マイケル・ダグラス)の説得にもかかわらず、今は市井の一人として暮らしていた。
そんな彼女が、バイオテロ計画の重要人物の尋問役として呼ばれる。

ノオミ・ラパスの少し頬骨が高い顔立ちは、いかにも意志が強そうに見える。
少々のことではへこたれそうにはない。

それに尋問のスキルだけではなく、格闘も強いし射撃も上手い。
尋問官がそんなにアクション強いか?とも思ってしまうのだが、女性版ボーンという触れ込みだから、これで好いのだよ(笑)。

物語は、バイテロの実行指令を阻止出来るのかどうか、ということになっている。
指令伝達者の顔は敵も知らないはず。
それなら替え玉を仕立ててもバレないんじゃね?
このあたりの裏のかきあいがキモにはなっている。

大腿の付け根って太い動脈が走っているから、これを切断されると致命傷になる訳か。
心臓や頸動脈を狙うのと同じ効果になるわけだが、これまでここを狙った映画はあまり観たことがなかった。
なるほど、そうかと新鮮だった。

(以下、完全ネタバレ)

マイケル・ダグラスが序盤で死んでしまって、おいおい、それはないだろ。
ということは、彼が復活してきての黒幕か・・・。と思っていたら、ビンゴっ!(笑)
オーランド・ブルームは意外に意外な役どころ。
ま、彼が偶然に盗みに入った通りすがりの元兵士なんて、観ている人は誰も信用はしていなかっただろうなあ。

このほかにも、ジョン・マルコヴィッチトニ・コレットと豪華な出演陣だった。
しかし、その割には物語はやや単調だった。
ただの諜報員アクションもので、それほどの深みが感じられなかったのは残念。