2016年 ポルトガル 76分
監督:ケイブ・クリンガー
出演:アントン・イェルテェ、 ルーシー・ルカ
異国の地でのラブ・ストーリー。 ★★
舞台はポルトガル北部の港町ポルト。
この街でひとり暮らしをしているアメリカ人のジェイク(アントン・イェルチェ)は、フランス人留学生マティ(リュシー・リュカ)と出会う。
二人は意気投合して濃密な一夜を過ごす。
この映画はジム・ジャームッシュ製作というだけあって、まったく覇気がない内容になっている。
ジャームッシュ作品の場合は、その覇気のなさが妙に居心地のよい気怠さを醸し出すのだが、本作は男の側のあまりの覇気のなさにイライラしてしまった。
誰かがこの映画の男女について、「女性の強さが男性を思い悩ませ、男性の弱さが女性を思い悩ませる」と描いていたが、なるほど、言い得て妙である。
一晩の恋を永遠と思って立ち止まってしまってそこから動けないでいる男と、ただの一晩の恋としてあっさりと通り過ぎる女。
ジェイク、マティ、ジェイクとマティという3章立てになっていて、時間軸も交差するが、それほど効果的ではなかった。
(というか、どの場面が最初の出会いで、どこからが再開の場面なのかが、とても分かりにくい。
だから、二人の心の揺れ動き方も捉えにくいものとなっている)
ジェイクはマティとの一夜が忘れられずに、うだうだと覇気のない生活を送る。
一方のマティは婚約者だったポルトガル人の教授と結婚して女の子を産む。そしてその結婚生活は破綻していく。
ヘタレなダメダメ男のジェイクは分からないでもない(なにせ、ヘタレだから 苦笑)。
分からないのはマティ。
頭脳明晰で婚約者もいながら、どうしてジェイクみたいな男の誘いに乗って一夜を共にしたりするのだ?
何年かして二人はポルトで再会したのかと最初は思っていた。
しかし、よく考えると、二人にはあの一夜だけがあり、その後の二人がそれぞれにあの一夜を思いだしているだけかもしれないと解釈した。
どうもそちらが正解なようだ。
ということで、物語自体はとりたてていうものではない。
ポルトという美しい港町を背景に揺れた男女の刹那の恋物語、ということだった。
異国の町での出会いと別れ、この雰囲気だけで満足できるか。どうか。
私は不満だった(汗)。
アントン・イェルチンは映画公開前に亡くなったようで、エンドロールで”彼に捧ぐ”とのコメントが付いていた。