あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「悪人伝」 (2019年)

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2019年 韓国 110分
監督:イ・ウォンテ
主演:マ・ドンソク、 キム・ムヨル、 キム・ソンギュ

悪人ばかりのノワールもの。 ★★★☆

 

マ・ドンソクは「新感染 ファイナル・エクスプレス」で非常に印象的だった。
その後はあれよあれよという間に売れっ子となった。
重量感のある強面感なのだが、同時にどこか愛敬がある。

 

さて。マ・ドンソク扮するチャン・ドンスは見るからに武闘派のヤクザ組長。
冒頭からあのぶっとい腕でサンドバッグを叩いている。
さすが武闘派、身体を鍛えているなと思っていたら、そのサンドバッグの中にはリンチに遭わされたチンピラが入っていた。
うへえ、さすが韓国映画、やることがえげつないなあ。

 

そのドンスが何者かに襲われてめった刺しにされた。
おのれ、この俺を襲うとはなんて奴だ。必ずとっ捕まえて目にものを見せてやる。
ヤクザ組長としてのメンツもかかっている。奴を探し出せっ。

 

一方、連続猟奇殺人魔を追っていた刑事のテソク。
上司には逆らうわ、捜査のためなら暴力もお構いなしだわ、のはみ出し刑事。
犯人の顔を見た唯一の生存者であるドンスと手を組むことにする。

 

極悪なヤクザ、命令無視の粗暴な刑事、それに猟奇的な犯人。
要するに、三つ巴になる登場人物はみんな悪人(笑)。

 

それに協力するといってもヤクザと刑事、目的は報復と逮捕という相反している。
お互いを利用して、お互いに出し抜こうとしている。
さあ、どちらが先に犯人を捕まえるのか。

 

マ・ドンソクは、「無双の鉄拳」に代表されるように、その超ド級のガタイでばしばしと相手をやっつける役どころは、もう鉄板である。
それでいて「守護天使」で女子高校の教師役になると、妙に照れたようなところも見せる愛敬もある。
どちらにしても存在感がありまくり。

 

刑事役の俳優は初めて観たと思うのだが、武井壮に似ていないかい?
そして犯人がまたふてぶてしい。
冷酷非情、その精神状態は常人ではない。それでいて非常に悪賢い。
こんな奴が街中にいたら、と思うだけで、夜は出歩けなくなってしまうほどに怖い奴。

 

さあ、どうやってあいつを探し出す?
そして、どうやってあいつの罪を立証する?
いやいや、俺は裁判で裁こうなんて思ってはいないぜ、見つけ次第にあいつを叩きのめしてやるだけだ。
おいおい、ちゃんと捕まえて刑務所で罪を償わせなけりゃ駄目だろ。

 

ふ~む、ヤクザと刑事の共闘はどうなる?
そして狡猾な犯人にはどのような結末が待っていたのか?

 

(ネタバレ)

 

最後、ある場所で犯人を見かけたドンスのニヤッと笑った顔が、もう、たまりませんなあ。

 

 

「キラーズ 10人の殺し屋たち」 (2019年)

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2019年 アメリカ 92分
監督:ケン・サンゼル
出演:ニコラス・ケイジ、 アナベル・アコスタ

殺人連鎖。 ★★★

 

ニコラス・ケイジ主演ということだし、この10人の中の8人が死にますという惹き文句で観賞。
結論として、大傑作というほどではないが、予想以上の出来にはなっていた。
脚本もかなり凝っていて、そうもってくるのか、という感じだった。

 

冒頭、ニコラス・ケイジがフロントにいる場末の「フランコのホテル」に曰くありげな男2人がやって来る。
2階の物陰から様子をうかがう返り血を浴びた美女。
さあ、これはどういう状況なんだ?

 

時間がさかのぼる。
そのホテルの一室からターゲットを狙っていた初老の殺し屋マーカス。
ところが、向かいのビルの屋上にも殺し屋サンチェスがいた。
このあたり、すっかりマーカスが主役のような描かれ方で、ニコケイはどうなったんだ?と思うほど。
しかし、消音した狙撃銃の撃ち合いでマーカスは殺されてしまう。

 

ありゃ、マーカスが死んじゃったよと思っていたら・・・。

報酬のダイヤを手にしたサンチェスも、今度は2人組の汚職警官に襲われて殺されてしまう。
そこにいたるサンチェスと汚職警官たちの駆け引きもなかなかに見せてくれた。

 

仲間割れして生き残った警官の1人は、隠れ家で待っていた女レナータにダイヤを渡す。
今度はそこに2人の殺し屋が襲来して来る。

 

1人脱出したレナータは、最初にマーカスが殺された「フランコのホテル」にやってくる。
そして曰くありげなニコケイと腹の探り合いをしたり、ハニー・トラップを仕掛けたり仕掛けられたり。
レナータを追ってきた2人組を、彼女とニコケイがそれぞれ殺してしまったり。

 

そこに新たな2人がやってきて、冒頭の場面につながるわけだ。
次から次へと物語が進み、高価なダイヤが転々と持ち主を変える。
このダイヤはいったい誰が持っていたものなのだ?
何のためにこんな殺人連鎖が起こっているんだ?

確かに連鎖的にどんどんと人が死んでいく。え~と、これで何人目が死んだんだっけ?

 

映画の終盤で、2人組に殺されそうになっているニコケイが、最後の俺の話を聞かないか、と思い出話を始める。
実はそれこそがこの殺人連鎖の内幕だったのだ。そうか、そういう訳があったのか。

最初に殺されたマーカスも、次に死んだサンチェスも、そういう裏があったのか。

 

いささか後出しじゃんけん的な無理なこじつけ感があることは否めない。
しかし、あれよあれよと観てきた殺人連鎖にもちゃんとそれなりの意味があったわけだ。なるほど。

 

B級感満載の映画ですが、退屈するようなものではありません。
気楽に愉しみましょう。
しかし、最後のニコケイのお話はよく聞いていないと理解できない部分がありますよ。
いや、よく聞いていてもつじつまの合わないところが・・・(苦笑)。

 

「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」 (2018年)

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2018年 ロシア 113分
監督:アレクセイ・シドロフ
出演:アレクサンドル・ペトロフ、 イリーナ・スタルシェンバウム

戦車1台での逃走劇。 ★★★

 

以前に間違えて「T-34 ドイツが怖れた戦車」を観てしまった。
あれも充分に面白かったが、同じ「T-34」でも観ようと思っていたのはこちらだった。
制作にはあのニキータ・ハミルコフも名を連ねている。これは間違いないかな。
ソ連の最強戦車T-34を描いて、ロシアでは大ヒットしたとのこと。

 

第二次世界大戦のヨーロッパ戦線。
戦車長に抜擢されたイヴシュキンは、ナチスのエリート将校イェーガー大佐の戦車と戦い捕虜となってしまう。
しかし、イェーガー大佐はイヴシュキンの腕を高く評価していた。

 

ドイツ軍はソ連T-34戦車を撃ち破り、戦場から回収してくる。
よし、このT-34を使って敵の戦闘能力を確かめよう、実弾演習で試してみよう。
おい、イヴシュキン、捕虜兵の中から戦車要員3名を選抜して、一緒に4人で壊れたT-34を修理しろ。それから我々の演習の相手をしろ。
しかし、砲弾は与えない。我々の戦車隊の砲撃をどこまで受け止められるかの演習だ。

 

おいおい、それじゃ俺らは砲撃の的になるだけかよ。死ぬだけかよ。
狭い戦車の中にはソ連兵の死体が残されており、酷い臭いを放っている。
それを丁寧に処理して、戦車の修理、整備をおこなうイヴシュキンたち。

 

すると、T-34には6発の砲弾が残されていた。
しめた、これは隠しておかなくては。これを使ってドイツ軍に一泡吹かせてやるぞ。
T-34に乗って、演習場からそのまま逃げ出してしまおうぜ。

 

こうして演習当日、イヴシュキンたち4人は隠しておいた砲弾を積み込む。
まずは演習場で、相手は丸腰だ、簡単にやっつけてやろうぜ、と油断していたドイツ軍のパンター戦車1台を撃破する。
なに?どうして奴らが砲弾を持っているんだ? これはどうしたことだ?
このあたりは、油断していたドイツ軍にまさかの一撃を食らわせる痛快さがあった。

 

さあ、どんどん行くぜ。
驚ろいてT-34を撃破する体制をとろうとするドイツ軍を尻目に、イヴシュキンらは収容所の門を乗り越えて脱出する。
戦車ってすごいんだなあ。普通の建物なんてどんどん壊してしまう。
逃走ルートの地図を盗み出して協力してくれた女性捕虜とも落ち合い、5人は間道を縫ってチェコを目指す。

 

もちろん、怒り心頭でプライドも傷つけられたイェーガー大佐も必死。
よし、チェコに向かうルートをすべて遮断しろ。儂は偵察機に乗り込んで空から探索するぞ。
さあ、イヴシュキンたちは逃げ延びられるのか?
間にはイヴシュキンと一緒に逃げている女性との恋物語も挟まる。
(これはあまりにもベタな展開で、かえって微笑ましくて好かった。)

 

ついにある街で待ち構えていたパンター戦車部隊との戦いが始まる。
撮影には本物のT-34を使っているとのこと。
戦車オタクにはたまらんだろうな。たしかにリアルさがすごい。

 

相手を撃つためには、当然ながら戦車の砲塔を相手に向けなくてはならない。
その砲塔の旋回がリアルにゆっくりなのだ。そのもどかしさがかえって緊迫感を高める。
戦車ものも好きだが、潜水艦ものも好きである。
あちらでも敵に魚雷発射をするための操艦をしなければならないのだが、そのもどかしさがあった。

 

こちらは1台。相手は何台もの戦車。
おまけにこちらの砲弾は数が限られている。どうやって敵を倒す?
最後にイヴシュキンはイェーガー大佐と因縁の一騎打ちとなる。

 

戦争物だから本当は悲惨な状況が沢山あったはず。
しかしこの映画ではそのような場面は映し出されない。
あくまでもエンタメ性を重視しており、反戦とか人道とか、そういった理屈も持ち込まない。
純粋に愉しむことができる映画だった。
後味も好かったですよ。

 

「戦略大作戦」 (1970年)

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1970年 アメリカ 144分
監督:ブライアン・G・ハットン
出演:クリント・イーストウッド、 テリー・サバラス、 ドナルド・サザーランド

戦略ネコババ大作戦。 ★★☆

 

邦題は酷い。内容とまったく合っていない。
この邦題では「史上最大の作戦」とか「バルジ大作戦」とか、そういった本格戦争物(?)をイメージしてしまう。
ところがこれは、戦争のどさくさにまぎれて、はみ出し野郎たちが金塊を猫ばばしようというエンタメ映画である。

 

大戦中のヨーロッパ戦線。
ドイツ軍の1400本の金の延べ棒を隠しているとの情報を得たアメリカ兵のケリー(クリント・イーストウッド)。
しめしめ、よし、こいつをいただいてしまおうぜ。
しかし、その場所はまだドイツ軍が占領している街の銀行。
どうやって金塊をネコババする?

 

味方を誤爆したということで中尉から二等兵に格下げされたケリーは、小隊長のジョー(テリ・サバラス)を仲間に引き入れる。
親分肌のジョーは粗野だが部下思いの面もある。
ただただ格好好いケリーに比べると、キャラはよほど立っている。

 

敵の占領地を攻めるんだから、それなりに仲間が必要だぜ。
ということでジョーが率いる小隊にプラスして、経理担当の奴や、戦車小隊まで仲間になる。

 

この3台の戦車の隊長のオクドバルにドナルド・サザーランド
砲身を一回り太く見せるカバーを掛けて強く見せかけたり、進軍の時には大音量で音楽を流して敵を威圧したり(そのための大型スピーカーも取りつけている)、どこかぶっ飛んでいる。
イーストウッドは絶対に演じないような変人奇人の類だなあ(笑)。

 

途中では敵軍との壮絶な戦闘場面もある。
また地雷原を匍匐前進する場面もある。
ちゃんと戦争映画なんだ。

 

さて、いよいよ金塊が隠されている街まで攻め込んだが、なんとドイツ軍のタイガー戦車3台が守っている。
こちらはシャーマン戦車3台。とても勝ち目はないぞ。
どうもタイガー戦車というのは最強で、砲撃能力も装甲能力もシャーマン戦車の比ではなかったようだ。
(この戦車同志の闘いの映画がブラピの「フューリー」だった)
どうする?

 

イーストウッド、サバラス、サザーランドの3人が、ドイツ兵に取引を持ちかけるために、タイガー戦車の前に歩いて行く。
おお、この場面はマカロニ・ウエスタンの一場面のようではないか。
イーストウッド映画ならではの場面だなあ。

 

ついにケリーたちはまんまと途方もない量の金塊を手に入れて、意気揚々と引き揚げていく。
それも、壊れたシャーマン戦車を捨てて、敵からから奪い取ったタイガー戦車に乗り換えて、だ・・・。

 

全体にコミカルな味付けのエンタメ映画でした。
しかし戦闘場面は本格的なものでした(主役には敵弾が当たらないというお約束付きですが 苦笑)。
声高に反戦とかをいっている映画ではありませんが、戦争の馬鹿馬鹿しさを皮肉っている内容にもなっていました。

 

(以下、蛇足)
あるコメントで、この邦題は当時ヒットしていた「スパイ大作戦」に引っかけたのかもしれない、とあった。
なるほど、そう考えるとこの的外れのように思える邦題も肯ける。

 

もうひとつ。
DVDには映っていなかったのだが、オリジナルの映画では、最後の場面には上空をアメリカ軍戦闘機が飛んでいたとのこと。
ひょっとすると、タイガー戦車に乗りこんだケリーたちはこのあと誤爆されたのでは?という含みがあったようだ。
そういえば、ケリーは味方への誤爆の責任を取らされて二等兵に降格されていたのだったな。
今度は誤爆された?

 

「ハイ・クライムズ」 (2002年)

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2002年 アメリ
監督:カール・フランクリン
出演:アシュレイ・ジャッド、 モーガン・フリーマン

軍事法廷もの。 ★★★☆

 

弁護士のクレア(アシュレイ・ジャッド)は、夫トムと幸せな毎日を送っていた。
しかし、自宅に侵入した泥棒の捜査過程で採取した指紋から、夫トムは実は別人であることが判明する。
そしてトムはロナルド・チャップマンという人物だとしてして海兵隊に捕らえられ、軍事裁判を受けることになる。

 

こういう法廷ものは好きである。
証拠を集め、それを論理的に解釈して、事件を少しずつ明らかにしていく。
弁護側と検事側が組み立てた論理と推理をぶつけ合う。何が真実で、どちらの言い分が正しいのか。

 

さて今回の事件。
トムは海兵隊特殊工作員時代にエル・サルバドルで一般市民を虐殺した罪を問われたのだった。
トムがそんな非道なことをするはずがない、トムを信じるクレアは自らトムの弁護をおこなうことにする。
しかし、軍事法廷は特殊なのだよ。一般の裁判とは違うのだよ。

 

どうもトムは、軍の重大秘密を守るために利用されたようなのだ。
上官の命令を受けた何者かがその証拠を消すために残虐行為をおこない、その罪をトムに被せようとしているのだ。
私の愛するトムは陥れられたのよ。何とか弁護しなくては。

 

親切を装ってクレアに脅しをかけてくる元同僚もいる。
トムと同じ部隊にいたというし、どう見てもあいつが怪しいよなあ。
クレアは元軍人の弁護士チャーリー(モーガン・フリーマン)の助けを借りて、軍事法廷に臨むことにする。

 

アシュレイ・ジャッドは、「ダブル・ジョパディー」での自分を罠に嵌めた夫への復讐を果たす女性像が印象的だった。
あの映画もよくできた法廷ものだった。

 

この映画で彼女を助けるモーガン・フリーマンは、さすがの存在感。
この人が出てくれば、絶体に何とかしてくれるという安心感がある。そういう役どころのイメージが固定してしまっている。
それ、本人にとっては、好いこと?
それはそれとして、バイクを乗り回すフリーマンは格好良かった。

 

エル・サルバドルでの事件にはもうひとつの裏もあった。
それをネタに、クレアはついにトムの告訴取り下げを勝ち取る。
やったね。
しかし、本当に活躍したのはやはりチャーリーだった。
クレアよ、まだまだお主、若いのお。

 

(以下、ネタバレ)

 

似た展開を見せた法廷ものといえば、「真実の行方」(1996年)。
弁護士役のリチャード・ギアもよかったが、あの映画ではなんと言っても新人のエドワード・ノートンだった。
必死に弁護をしてやっと裁判に勝ったのに・・・、という展開は、あの映画が元祖だった気がする。

 

この映画は、残念なことに世評はあまり良くなかったようだ。
最後のどんでん返しは、こうなるだろうと思いながら観ていた人が多かったとのこと。
ま、映画だから単純に終わるはずもないからね。

 

でもアシュレイ・ジャッドがお気に入りの私は満足して観た。
アシュレイ・ジャッドの目元は、一昔前のアンジーに似ているのだ(苦笑)。

 

「第七の封印」 (1956年)

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1956年 スウェーデン 97分
監督:イングマール・ベルイマン

神はどこにいる? ★★★

 

今、このコロナ禍の時代に見るべき映画かということで鑑賞。

 

10年間の十字軍遠征からの帰途にある騎士アントニウスと従者のヨンス。
これだけ神のために闘ってきたというのに、神は一向にあらわれず、人々を救ってもくれない。
地上にはペストが蔓延し、人々は次々に死んでいく。

 

冒頭で、アントニウスは黒装束の死神とチェス盤を間に向かい合っている。
有名な場面である。
顔面以外を黒服でおおった死神の姿は象徴的で、もしかすればジプリ作品にも影響を与えているのかもしれない。

 

聖書に拠れば、第七の封印が解けるときに最後の審判が始まるという。
そしてキリスト教信者は天国に行けるようなのだ。
しかし、その最後の審判をおこなう神はどこにいるのだ?というのが、どうやらこの映画の主題のようだ。

 

アントニウスとヨンスはいろいろな人々と出会う。
幼い子供を連れた旅芸人夫婦、ヨンスが暴漢から救った女性、堕落した神学者、妻が駆け落ちをしようとした鍛冶屋夫婦。
そして十字架を背負ったり自らを鞭打って神の赦しを乞う一団。
疫病を流行らせた魔女として民衆に攻められる女性・・・。

 

この映画はキリスト教に精通していないと、その寓話性がほとんど理解できないのかもしれない。
無宗教の私には、映画が意味しようとしたものはまったく理解できていないのだろう。
ただ物語と映像を味わった、ということになる。
しかし、宗教的なことを離れても、美しいモノクロ映像と詩的な台詞を楽しむことはできた。

 

最後の場面では、旅芸人一家は、夜が明けた丘の上を死神に先導されて手をつないで歩むアントニウスらを遠望している。
黄泉の国へ向かう死の舞踏なのだろう。

 

カンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞しています。
この映画の直後に撮った「野いちご」ではベルリン映画祭の金熊賞を受賞しています。

 

「ハリーの災難」 (1955年)

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1955年 アメリカ 99分
監督:アルフレッド・ヒッチコック

サスペンス・コメディ。 ★★★

 

登場人物はちょい役の脇役も入れて10人ほど。
田舎町で起こった死体をめぐるコメディで、コンパクトにまとまっている。

 

元船長のアルバートは狩猟が趣味。
この日も丘で狩猟を楽しんでいると、あれ、人が死んでいる。私が誤って撃ち殺してしまったのか、どうしよう・・・。
死体を隠してしまおうかな・・・。

 

と、そこにやってきたグレブリー夫人。
死体を見て驚くこともなく、アルバートと一緒に死体を隠そうとする。
実は、その男が急に襲ってきたので夫人は靴のかかとで殴ったのだった。
私が殺してしまったのかしら。

 

人里離れた丘の上なのに、死体を隠そうとすると、次々に人がやって来る。
単純に可笑しい。
読書をしながら散歩してきたドクターは、死体に躓いて転ぶのだが、そのまま行ってしまう。
絵描きのサムは、死体を見て何故か死顔をスケッチしはじめる。
死体の靴を盗む浮浪者もやって来る。

 

やがて死んだ男が村の美人妻ロジャースの夫のハリーだったことがわかる。
長く不在になっていたハリーが突然現れて、私が殴ったらふらふらと出て行ったのよ、とロジャーも告白する。私が殺したのかしら。

 

いったいハリーを殺したのは誰なんだ?
こうなりゃみんなで協力して死体を埋めてしまおう。うんうん、それがいい。

 

こうしてハリーの死体を埋めてしまうのだが、このあともドタバタと騒動が続く。
ハリーの死体は掘り返されたり、また埋め戻されたり。
おいおい、もう夜が明けてしまうぞ。
ホント、ハリーの死体にしてみれば、とんだ災難(苦笑)。

 

季節は秋。丘の木々はきれいに色づいている。
その風景のなかで、どこまでも善良で小心な人々が騒動を繰り広げる。
タイトルも粋で、最後まで小洒落た感じで面白く観ることができます。

 

ハリーの奥さん(ロジャース)役のシャーリー・マクレーンは本作が映画デビューだったとか。
あれ、ヒッチコック監督はどこに出ていた?