あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「インビジブル・ウィットネス」 (2018年)

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2018年 イタリア 102分
監督:ステファノ・モルディーニ
出演:リッカルド・スカマルチョ、 ミリアム・レオーネ

推理サスペンス。 ★★★☆

 

山頂にあるホテルの一室で、美人カメラマンのラウラ(ミリアム・レオーネ)が撲殺される。
容疑者はその部屋で逢い引きをしていた実業家のドリア(リッカルド・スカマルチョ)。
今はもう逮捕を待つばかりのドリアのもとに、敏腕だといわれている女性弁護士がやってくる。
私に任せなさい、私は敗訴したことがありません。その代わり正直に全部話してくださいよ。

 

事前情報もないままに、それほど期待もせずに観たのだが、これは・・・!
殺人事件の容疑者の供述、そして彼を弁護するために供述を問い質す女性弁護士。
一室での会話劇を軸に、回想場面が絡み合う。
大変に面白い。もうけものの映画だった。

 

実はラウラが殺される事件の数か月前にもう一つの事件があったのだ。
渋っていたドリアは、やがてその事件のことを話し始める。
ドリアとラウラは、逢い引きの帰りの林道で飛び出した鹿を避けようとして対向車と事故を起こしてしまう。
二人は無事だったのだが、対向車の若い男は即死状態だった。ありゃあ。

 

ドリアは警察に通報しようとしたのだが、ラウラは自分たちの保身のために事故を隠蔽しましょうと言う。誰も見ていないわ。
警察への通報はなしよ。遺体と車を何処かで処分してきてちょうだい。

 

基本は会話劇なのだが、ドリアの話の回想場面がちょうどいい具合に挿入される。
しかしそれはドリアの供述の映像なのだ。
彼は本当のことを話しているのか? どこまでが本当のことなのかは判らないぞ。
聞き手の弁護士は、ドリアが嘘をついていないかどうか、チェックする。
観ている我々はどこまで信じていればいい?

 

やり手弁護士はつじつまの合わない点をするどく指摘する。
ドリアは渋々嘘をついた点を認める。うん、ああ言ったけれど、実はこうだったんだ。
回想場面が修正されて映される・・・。
あれ、本当はこうだったのか・・・。

 

事故で死んだ若い男の両親が、意外なところから絡んでくる。
これには戦慄。
悪いことってしてはいけないんだ、神様はみんな知っているんだ、と思わず口ずさんでしまいそう。
そしてその事故を隠蔽しようとしたばかりに、次々に大きな嘘をつかなくてはならなくなり、偶然の目撃者からは大金を要求されたり・・・。

 

最初の事故でも、最後まで隠しておきたかったことがドリアにはあった。
それをするどく指摘する女弁護士。
その事故の隠蔽がついにラウラ殺しの真相に結びついていく。

 

スペイン映画のリメイクだったとのこと。
オリジナルは当然知らないのだが、やはりリメイクされる物語というのは脚本がしっかりしているのだろう。

 

(以下、ネタバレ)

 

どんでん返しが見事!という評価が多いこの作品。
途中から、どうもこの人物はなにか怪しいぞと私も思いながら観ていたのだが、まさか、そこまでとは思わなかった。

 

最後の”ミッション・インポッシブル”には呆気にとれてしまった。
おいおい、そうきたか! 
そこまでこなくても充分に面白かったけれど、そうきたか! やられたよ。

サスペンス好きな方にはお勧めの1本です。

 

「ポテチ」 (2012年)

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2012年 日本 68分
監督:中村義洋
出演:濱田岳、 木村文乃、 大森南朋

ほんわか人間ドラマ。 ★★★☆

 

伊坂孝太郎の短編の映画化。監督はもちろん中村義洋
68分という短さだが、その長さがちょうどいい心地よいドラマがそこにある。
舞台は伊坂ものなので、もちろん仙台。主人公ももちろん濱田岳

 

どこか頼りなさそうな今村(濱田岳)は、実は空き巣が生業。
同棲中の恋人の若葉さん(木村文乃)と一緒に、とあるマンションの一室に忍び込んでいる。
そこは今村が熱烈に応援しているプロ野球選手の尾崎の部屋だった。
と、そこの留守電に若い女性から尾崎に助けを求める電話が入る。
途惑う二人。どうする?

 

実は以前にも似たようなことがあったのだ。
そのときも今村が空き巣に入った部屋への留守番電話がかかってきたのだ。
電話の主の女性はどうやら家主の元カノらしく、これから飛び降り自殺をすると泣き喚いている。
お人よしの今村は、「キリンに乗っていくから、待っていて!」とわけのわからないことを言って、彼女がいるビルの屋上へ向かう。

 

濱田岳は伊坂+中村コンビの映画では、もう必須アイテムと言ってもよい存在。
真面目で人がよくて、それでいてどこか常識外れのようなところを持っている雰囲気が、作品によく合っている。

 

実は恋人の若葉さんは、そのときに飛び降り自殺を思いとどまった女性。
おやおや、好い展開だね。
今村の空き巣の師匠が通称”親分”(中村義洋監督が扮している)。
この親分は、少年野球をやっていた頃にフライが捕れなかったというエピソードの持ち主。
黒澤さん(大森南朋)という探偵もしている空き巣の先輩も登場する。
彼は無口で社交性ゼロなのだが、なかなかに好い人なのだよ。

 

さて、今村が、どうして尾崎の大ファンだったかというと、地元出身というだけではなくて、誕生日まで一緒だったのだ。
なるほど、そうだったのか。

 

タイトルは、今村が買ってきたポテチを若葉さんと食べる場面から来ている。
今村は頼まれていたものとは違う味のポテチを若葉さんに渡してしまう。
間違った味のポテチを食べた若葉さんは、こちらの味も美味しい、間違ってもらって、かえって良かったかも、と言う。
その言葉に今村は急に号泣する。えっ?
実際のところ、この場面でなぜ今村がそんなことで泣くのかは判らずに、見ている人は呆気にとられる。
しかし、映画を見終えるころには今村の気持ちはじんわりと浸みてきているのだ。

 

いろいろと散りばめられていた伏線が見事に回収されていく。
ああ、そうだったのか。
クライマックスは今は落ち目になっている尾崎選手が代打で登場する場面。
(なぜ、登場できたのかにも裏があったのだが・・・)

 

(以下、最後のネタバレ)

 

エンドクレジットの後の映像は、フライを捕れずじまいだったあの中村親分。
親分がタクシーを停めるために上げた手に、尾崎の打った場外ホームランボールがスポンと飛びこんでくる。
そんな馬鹿な!と言うところだが、伊坂作品らしいファンタジー場面だった。

今村の気持ちが切なくて、それでいてじんわりと温かいものが伝わってくる作品です。
小品ですが、お勧めです。

 

「嘘を愛する女」 (2018年)

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2018年 日本 117分
監督:中江和仁
出演:長澤まさみ、 高橋一生、 吉田鋼太郎

愛した貴方は誰? ★★☆

 

物語の始まりは、あの大震災が起こった日。
パニック気味に帰宅する群衆の中で困っていた川原由加利(長澤まさみ)に、自分の履いていた歩きやすいスニーカーを渡してくれたのが小出桔平(高橋一生)だった。
偶然再会した二人は、由加利の猛アタックで一緒に暮らすようになる。

 

二人の関係は由加里主導。
彼女はバリバリのキャリアウーマンで、”ウーマンズ・オブ・ザ・イヤー”にも選ばれたりしている。
自信満々、自己中なところもあって少々は勘違い女。
それに比べて桔平はおとなしく、自分をほとんど表に出さない性格。
そんな二人だから上手くいっていたのかな。

 

ところが同棲をはじめて5年が経ったある日、桔平はくも膜下出血で意識不明となってしまう。
そして、そして、彼の運転免許証や医師免許証がすべて偽造されたものだったことが明らかとなる。
えっ? どういうこと? 私が一緒に暮らしていた貴方は”小出桔平”ではなかったの?

 

なんでもこれに似た実際の話があったようだ。
5年間連れ添った夫が病死したので死亡届を出そうとしたら、そんな男性は実在しなかったという。
名前も本籍もすべて嘘で、結局その男性の身元は不明のままだったとのこと。
へえ、そんなことってあるんだ・・・。

 

この映画では、由加里は私立探偵の海原(吉田鋼太郎)をやとって桔平の真の姿を調べようとする。
由加里に海原が言う、お嬢ちゃん、知らないでいる方が好いこともあるんだよ。
たしかに、人がなにかを隠していた、あるいは嘘をついていたことにはなにかの理由があるわけだ。
それを調べることはその人が望むことではないだろう。
しかし、その人の嘘の理由が分からなければ、私が愛したこと自体が嘘になってしまう・・・。
その思いも判るよなあ。

 

由加里と海原は、桔平が秘かに書いていた小説の原稿を見つける。
そして小説の舞台となっている瀬戸内を訪れ、桔平の過去を探っていく。
夕日がかかって大きなロウソクのように見える灯台はどこにあるの?
このあたりはロードムービーのようでもあって好い展開だった。

 

性格にちょっと難がある(あのコンフィデンスマンのダーコみたい)なバリバリ女に長澤まさみはよく似合う。
一方の高橋一生は控えめ演技で悪くなかった。
そしてこの映画で一番好かったのは探偵役の吉田鋼太郎
ぶっきらぼうなのだが根は親切で、世間の甘いも酸いも承知しているといった風情が映画を引き締めていた。

 

桔平がかっての自分を封印した理由は何だったのか? 
桔平の過去に何があったのか?
由加里と海原はやがて一軒の無人の家にたどり着く・・・。

 

過去を隠す場合、その人が悪事を働いていたか、あるいは忘れたいような辛いことがあったか、そんなドラマとなる。
そのあたりは上手くまとめていた。
ただ、映画の最後の最後、あれはちょっとどうだったかなあ。
甘すぎませんか?

 

 

「マッスル 踊る稲妻」 (2015年)

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2015年 インド 188分
監督:シャンカール
出演:ビクルム、 エイミー・ジャクソン

インド版美女と野獣・復讐編。 ★★☆

 

冒頭で結婚式当日の美しい花嫁が控え室から誘拐されてしまう。
連れ去ったのは醜いせむし男。
美女と野獣か、はたまたノートルダムのせみし男か。美女はどうなる?

 

物語は時間軸が入り混じって展開される。
言ってみればせむし男が出てくるのが現在。そしてせむし男が誕生するまでの美男美女の物語が過去。
美男はボディビルダーのリンゲーサン(ヴィクラム)、そして彼があこがれていた女優のディヤー(エイミー・ジャクソン)が掛け値なしの美女。
美男美女の物語は華やかな、エンタメ系インド映画らしい展開ですすむ。

 

ひょんなことからディヤーのCM撮影の相手となったリンゲーサン。
ロケ地は美しく広大な中国の高原。
美しい風景に美男美女。CM撮影という設定だから、次から次へと夢のような場面があらわれる。
歌と踊りだって、CM撮影なのだからやりたい放題でおかしくはないぞ。

 

髭を剃って髪を短くしたリンゲーサン役のヴィクラムは、あれ、元・野球選手の新庄剛志にそっくりだなあ(笑)。
ヒロインのエイミー・ジャクソンはイギリス人だが、ちいさい頃からインド映画で活躍している。
つい先日は、”スーパー・スター”ラジニ・カーントと共演した「ロボット2.0」で観た。
彼女はある年の「「インドで最も好ましい女性」に選ばれたこともあるとのこと。
もう間違いのない美女、という形容詞は彼女のためにある!

 

しかし幸せ絶好調のリンゲーサンに逆恨みをする悪い奴らがいたのだ。
リンゲーサンに人気を奪われてしまったハンサム俳優や、一方的に片思いをしてふられたオカマの美容師。
さらにはリンゲーサンに悪徳製品を見抜かれた社長や、ボディビル大会で彼に負けたボディビルダー
なんとかしてリンゲーサンを不幸にしてやりたいぞ。

 

極めつけは、幼い頃からのディヤーに目をつけていたかかりつけ医。悪徳医師。
なんとかして美しい彼女を自分のものにしたいぞ。
彼らは共謀してリンゲーサンを襲って毒薬を注射したのだ。すると・・・。

 

そうなのだ、あのせむし男は毒薬によって醜く変貌してしまったリンゲーサンだったのだ。
さあ、彼の復讐が始まるぞ。
ここからはちょっとグロイ映像も出てくる。すさまじい復讐なのだよ。目には目を!

 

制作費は膨大なものだったらしいのだが、映画はどちらかといえば大雑把。
シャンカール監督の映画は本作にしても「ロボット」にしても、大味に好きなことをやっているという感じ。
例えれば、インドのポール・バーホーベン監督というところか。

 

めまぐるしく展開するので飽きることはないのだが、3時間越えといささか長い。
もうちょっとしゃきっとはできなかったのだろうか。
内容も、タイトルとかポスター写真で期待Iしていたような、華やかな脳天気なものではなかった。
本当に復讐譚なのだよ。

 

世界でもトップクラスの数が作られるインドのことだから、そりゃ玉石混淆にはなるのだろう。
以前は高評価のものだけが本邦公開になっていたのだろうが、インド映画の人気が上がるにつれて、どうもなあ?というものまで紹介されているような気がする。

 

どうみてもこの映画はタイトルとポスター写真に偽りあり!
こちらもすこしみる目を養わないといけないな。

 

「ゴッドファーザー」 (1972年)

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1972年 アメリ
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド、 アル・パチーノ

仁義なき戦いのマフィア版。 ★★★★

 

冒頭、コルレオーネ家の庭では明るく華やかな娘コニーの結婚式がおこなわれている。
その一方でブラインドをおろした薄暗い書斎では、マフィアの首領であるドン・ビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)が友人の頼みごとを聞いていた。
明と暗、動と静。コルレオーネ家の二つの顔を象徴する幕開けだった。

 

マーロン・ブランドといえば、このゴッド・ファーザーが真っ先に思い浮かぶ。
それほどに含み綿をしたような頬としゃがれ声は印象的だった。
圧倒的な重々しい存在感である。ヤクザ映画でいうところの、並の者とは”貫目が違う”ところをまざまざと見せつけていた。
このゴッド・ファーザー役で2回目のアカデミー賞主演男優賞に選ばれたが、アメリカ映画界の人種差別に抗議して受賞を拒否したのは有名な話である。

 

コルレーネに助けを求めてきた俳優のために映画プロデューサーを脅す逸話が入る。
コルレーネの指示を受けて組織の幹部がプロデューサーに交渉に行くのだが、彼はマフィアの脅しなど怖くもないと嘯く。
さて、彼には何にも代えがたい愛馬がいたのだが、ある朝、彼が目覚めるとベッドが血で汚れている。
シーツをめくると、そこには切り落とされた愛馬の首が転がっていた・・・。
ショッキングなシーンで、目的のためには手段を選ばないシチリア・マフィアのやり方が端的に描かれていた。

 

音楽はニーノ・ロータ。主題曲の「ゴッド・ファーザー 愛のテーマ」は、言うまでない名曲だと思う。
それに個人的に好きなのは、結婚式で流れていた民族舞踏の曲。
明るく華やかな裏になにか寂しいものを孕んでいるようだった。

 

ある日、別マフィア組織の後ろ盾をもつソロッツォがドン・コルレオーネに麻薬販売の仕事を持ちかけてくる。
コルレオーネは政界や警察とのパイプをもっており、それを利用しようという腹づもりだったのだ。
しかし、コルレーネは麻薬だけはいかんとその話を丁重に断る。

 

さあ、ここからが仁義なき戦いである。
コルレオーネの長男・ソニーが麻薬取り扱いにまんざらでもないことを知ったソロッツォは、コルレオーネの暗殺を謀るのだ。
冬の夕暮れの街中での襲撃シーン。一命を取り留めるものの重傷を負ったコルレオーネ。
そして、今までコルレオーネが支配していたニューヨークのマフィア・ファミリーが一斉に動き始める。

 

仁義なき戦いのマフィア版と書いたが、大きく異なる点がある。
それはシチリア・マフィアの血を分けた者への家族愛である。何よりもその絆を重んじる。
そして、組織に属する者同士の連帯感である。それこそファミリーなのである。

 

登場人物は、家族やファミリーの子分たちと大変に多い。
しかし人間関係に迷うことはない。
コルレオーネに絶対的な服従を誓う子分たちも、彼らの人間性が描き分けられている。
これだけの登場人物をちゃんと描いているところは、さすがにコッポラ監督の手腕だなと思う。

 

倒れたドン・コルレオーネの後を継いだ長男のソニー
しかしそのソニーも内通者の情報によって襲撃されてしまうのである。
父によって一度は堅気の道を歩み始めていた末子のマイケル(アル・パチーノ)が、ついにコルレオーネ一家を率いることとなる。

 

アル・パチーノはこの映画のとき32歳。若々しく、思慮深い。
しかし組織の維持のためには冷酷な決断もしていくような、やはりその筋の人間。

 

終盤近く、マイケルが生まれた赤ん坊の名付け親になる。
シチリア人社会にとってはこの名付け親(ゴッドファーザー)になるというのは大きなことであるようだ。
その子の行く末を見守る誓いを神にするような意味合いもあるようだ。

 

その一方で、同じ時にマイケルは対立組織の壊滅を命じていたのだ。
街のいたるところでコルレオーネ一家の血の粛清がおこなわれているのだ。
神聖で静かな教会のシーンと、繁華街での容赦のない銃撃・殺劇シーンが交互に映される。
見事な静と動、明と暗の対比だった。

 

久しぶりに再見したが、やはり堂々たるドラマだった。
3時間近いシチリア・マフィア一家の物語がまったくダレることなく展開されていた。
この映画の魅力は、なんといっても、単なるマフィアの抗争劇ではなく、重厚な人間描写、そしてファミリーを中心にした人間関係の綾をていねいに描いているところだと思う。

 

2年後の「Part Ⅱ」とともに、アカデミー賞の監督、作品、脚色の3冠に輝いている。
(正編、続編ともにアカデミー賞を受賞しているのはこのシリーズだけなのでは?)

 

「ビッグ」 (1988年)

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1988年 アメリカ 102分
監督:ベニー・マーシャル
出演:トム・ハンクス、 エリザベス・パーキンス

ほのぼのファンタジー。 ★★★

 

13歳のジョッシュは親友ビリーと脳天気な毎日を送っていた。
あるカーニヴァルの夜、身長制限に引っかかってジェットコースターに乗れなかったジョッシュ。
彼は広場の片隅にあった望みをかなえてくれるという魔王のボックスで遊び半分にコインを入れ、願いを言う。
大きくなりたい!
翌朝、ジョッシュは大きくなっていた、ちゃんと大人の身体になっていた。

 

心はそのままで身体だけが大きくなる、逆に若返る、という設定の映画はときおりみる。
そうした場合、見かけの年齢とはくいちがう主人公の行動が映画のキモとなる。
本作のジョッシュは子供の心を失っていない大人として、生活していく。
仕事、そして恋・・・。

 

トム・ハンクスが32歳の時の作品。
しかし、トム・ハンクスのお茶目な演技が素晴らしいせいか、大人のジュッシュが時に子供のように見える。
コメディ演技が主だった頃のトム・ハンクスだが、この頃から上手かったんだねえ。

 

さて。
大人びた親友ビリーの協力で、ジョッシュはおもちゃメーカーに就職できてしまう。
始めはデータ入力のような仕事をしていたのだが、子供の遊び心満点な自由な発想が新しいおもちゃの開発に活かされる。
そしてその才能は社長に認められ、あれよあれよと会社の重役になってしまう。
すごい。

 

キャリア・ウーマンのスーザン(エリザベス・パーキンス)は、そんなジョッシュに普通の大人にはない純粋さを感じて恋に落ちる。
いいのかな、どうなっても知らんぞ。
美しい成熟した大人の女性に迫られれば、いくら子供とはいっても、そこは男。
でも、いいのかな、どうなっても知らんぞ。

 

大人の生活にやりがいも感じていたジョッシュだったが、しかし、友だちの姿を見れば懐かしい。
自分が行方不明になって嘆き悲しんでいる家族を見れば心が痛む。
やっぱり、元の自分に還ろう。
でも、願いを叶えてくれたあの魔神のボックスはどこに行けばあるんだ?

 

(以下、結末のネタバレ)

 

無事に13歳の姿に戻り、家族の元に戻っていくジョッシュ。
その姿を車の中から見送るスーザン。彼女も好い人だったね。
それにしても、自分が好きになった相手が実は13歳だと知って、彼女はどんな気持ちになったのだろう。

10年が経てば、ジョッシュは23歳、スーザンは30歳代後半ぐらい。
そんな二人が再会したらどうなる? 
そんなドラマも観てみたいと思ったが、映画は元の姿に戻ったジョッシュが親友ビリーと仲良く遊んでいる場面で終わっていた。

 

ほのぼのとしたファンタジーものでした。
気持ちの好い映画でした。

 

「コールドマウンテン」 (2003年)

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2003年 アメリカ 155分
監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:ジュード・ロウ、 ニコール・キッドマン、 レニー・ゼルウィガー、 ナタリー・ポートマン

南北戦争下の恋物語。 ★★★☆

 

黒人奴隷制度がなかった我が国なので(士農工商ほかの身分制度はあったが)、南北戦争がどのような意味合いのものだったのかを私たちが感じることは難しい。
しかし、ともかくアメリカでは国を二分する歴史上の大事件だったわけだ。
この映画は、そんな南北戦争末期の悲恋を描いている。

 

主人公は、ヴァージニアの戦場で戦っている南軍の兵士インマン(ジュード・ロウ)と、彼が故郷のコールドマウンテンに残してきた恋人のエイダ(ニコール・キッドマン)。

 

エイダは、布教のために都会からコールド・マウンテンにやって来た牧師の父(ドナルド・サザーランド)と二人暮らし。
その美しさにインマンはすぐに恋に落ちる。
無口だが一途なインマンにエイダも惹かれていく。
広大な南部の田舎風景を背景に、少しもどかしいような美男美女の恋物語となるのだが、南北戦争の勃発が二人を引き裂く。

 

映画は、南北戦争が始まり、3年が経過したところから二人のそれぞれを交互に描いていく。
戦場で重傷となったインマンは、1枚のエイダの写真を肌身離さずにもっていた。
そして、もう一度エイダに会いたいと、ついに死罪を覚悟でインマンは脱走を図る。
そこから長く苛酷な故郷のコールド・マウンテンへの旅が始まる。

 

その頃、故郷のエイダは愛する父が急死し、生活は困窮していく。
お嬢様育ちのエイダは実用的なことはなにひとつ知らなかったのだ。
父の時計を売り、近所の人の思いやりでなんとか食べるものを手に入れる日々。
ただただ願うのは、音信も途絶えたインマンにもう一度逢いたい、ただただそれだけ。

 

ジュード・ロウが困難な旅を続ける不屈の男を好演していた。
いつもは割とにやけた色男といった雰囲気の役が多い彼だが、本作ではひたすら苦渋に耐える男である。格好いい。
ニコール・キッドマンはどこまでも華やか。
しかし、次に紹介するルビーによってエイダはたくましい女へと大きく変わっていく。

 

本作で輝いていたのは、男勝りで粗野だが気のいいルビー役のレニー・ゼルウィガー
エイダのところに住みつき、家のことから畑作りまで、エイダを助けて教え込んでいく。
レニー・ゼルウィガーといえば、私の中では「ブリジッド・ジョーンズの日記」のイメージだったのだが、本作ですっかり見直した。
好い女ではないか。

 

憎たらしいのは南軍の義勇軍を名乗る輩。
南部のためだというお題目の下、やりたい放題、威張り放題。
南軍の脱走兵捜しに駆け回り、見つければ容赦なく処刑をおこなう。
脱走兵を匿ったものも死罪だぞ。覚悟しておけよ。

 

インマンが故郷にたどり着いたとしても、待っているのは悲劇ではないのか?
しかも、義勇軍の首領はエイダに横恋慕して、事あるごとにイヤらしく近づいてくるのだ。
絶対にこいつは最後に悲劇の元を作るぞ。

 

旅の途中でインマンは一夜の宿を寡婦ナタリー・ポートマンに借りる。
赤子と二人ぐらしのポートマンは心細い不安な生活。
ひょっとして、インマンはこの地に留まってポートマンと暮らすのではないか、と思ったりもしながら観ていた。
でも、もしそうなれば、あのソフィア・ローレンの「ひまわり」になってしまうよなあ。

 

さあ、自分を待つ女の元へ苦難の旅を続ける男と、苦難の生活をしながら男の帰りを待つ女。
果たして二人は再会することは出来るのか。

 

ミンゲラ監督作だけあって、さすがの重厚な物語だった。
アカデミー賞ではレニー・ゼルウィガー助演女優賞を、ゴールデングローブ賞ではジュード・ロウニコール・キッドマンレニー・ゼルウィガーがそれぞれ主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞を取っています。
見応えのある映画です。