1960年 アメリカ 125分
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ジャック・レモン、 シャーリー・マクレーン
人情コメディ。 ★★★☆
ビリー・ワイルダーがジャック・レモン、シャーリー・マクレーンと組んだ傑作人情映画。
彼は同じ顔合わせで、これも傑作の「あなただけ今晩わ」を3年後に撮っている。
有名な作品なのであらすじは大方の人は知っていると思う。
上司へのゴマスリのために、重役たちの浮気密会場所として自分のアパートを提供している独身もののバクスター(ジャック・レモン)が主人公。
しかし、彼が秘かに思いを寄せていたエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)が部長の愛人と知り、愕然とするといったもの。
そのあたりの見せ方が上手い。
観客はフランが部長の愛人であることを画面から知らされているわけだが、それではバクスターがどういうことからそれを知るのだろう、と興味津々で展開を観ることになる。
いささかコメディタッチの騒動を交えたりして展開にも緩急を付けている。
小道具の使い方も上手い。
フランが持っていたコンパクトの鏡の割れ目や、茹でたパスタの湯切りに使うテニスラケット、バクスターの部屋の鍵とお偉いさん専用食堂の鍵、など。
それに、最後に銃声と思わせるシャンパンのコルク抜きの音も、やるねえ。
ジャック・レモン演じるバクスターは善人なのだが、出世のためには情けない役割を引き受けることもいとわないといった俗物性も持っている。
そのあたりが等身大の人物造形になっていた。
ショート・カットのマクレーンは可愛い。この映画の時は25歳ぐらい。
先日観た「あの日の指輪を待つきみへ」の時は75歳ぐらい。こちらの映画では少し醒めたような役柄だったが、どこか可愛らしさは残っていた。
他の登場人物達も好い感じである。
バクスターの部屋を密会場所として利用している5人のお偉いさん達も、(この時代だからか)不倫にそれほどの罪悪感はなさそう。
それにバクスターの隣の部屋の医師夫妻が好いアクセントになっていた。
言ってみれば上役の愛人との恋物語ということになるのだが、重いところはなく、全体は洒落た雰囲気となっている。
妻と離婚してフランと本気で結婚しようとした部長は、結局一人ぼっちになってしまった。ちょっとかわいそうだけれど、身から出たさび?
ワイルダーはこの作品でアカデミー監督賞を獲っています。