あきりんの映画生活

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「パーフェクト・キル」 (2023年) 何故、親父の死体がないんだ?

2023年 93分 イギリス 
監督:ロジャー・グリフィス

サスペンススリラー。 ★★☆

 

ヘンリー、ジョン、ヴィンスの三兄弟は、暴力で一家を支配していた父を森の中で殺す。
狩猟一家なのでみんながそれぞれのサイトスコープ付きの銃を持っている。
ついに父さんを殺すことが出来たぞ。母さんもこいつの暴力で殺されたのだし・・・。
さあ、死体を埋めてしまおう。

 

お金をかけていない徹底的なB級映画である。
舞台は森の中と、その外れに立つ家だけ。登場人物は一家5人と近所に住む叔父夫婦の7人だけ。
シチュエーションも単純で判りやすい。あっと驚くようなどんでん返しもない。
しかし、意外に面白いのである。まったく退屈しない。一体これどうなるんだ?

 

父が大切にしていた金庫があった。あの中には大金があるのじゃないか?
金庫の鍵を父は常に身につけていたのだが、あ、しまった、鍵も死体と一緒に埋めてしまった。

 

やむをえずに掘り起こしてみると、・・・死体がない!
いったい誰が死体を持ち去ったんだ? 金を独り占めしようとしてお前がやったんじゃないのか?
三人には恐怖と互いへの疑念が生まれる。
もしかすると父さん殺害をかぎつけたおじさんの仕業かもしれないぞ。

 

森の木には吊るされたさまざまな動物の死骸があり、古い衣類がぶら下がっていたりもする。
これはなんだ? 気味が悪いな。誰の仕業だ?
しかも誰かが三人に銃を撃ってくる。えっ、誰だ?

 

3人の怪し気な言葉と行動がちぐはぐに続く。
観ている者は、実はコイツが怪しくて、いや、本当はコイツとコイツが共謀していて…。
死体消失の真実はこっそりとアイツがやったのか?
いやあ、なかなかに引っ張ってくれるのだ。

 

(以下、ネタバレ)

 

実際は父は死んではいなかったのだ。土の中から自分で這い出してきたのだった。
で、そこからは三兄弟と父の凄惨な殺し合いとなる。

 

しかし三兄弟にもそれぞれの思惑があり、行動が一致団結というわけにはいかないところがミソ。
一番厄介なのが三男のヴィンス。
彼はただ一人父に可愛がられており、父を殺すことには及び腰だったのだ。
母を生き返らせようとしていろいろな動物の生け贄を神に捧げていたのもヴィンスだった。

 

母を殺したのは父だと思い込んで殺意をたぎらせていたのが長男のヘンリー。
しかし実は母は事故死で、その原因となったのは次男のジョンだったのだ。おいおい。

 

結局、長男のヘンリーは父に似て事を支配したがり、すぐにキレる。
次男のジョンは比較的まともなのだが行動力がまったくない。すぐに怖じ気づく。
三男のヴィンスはオカルトに走ったり、父をかばったりする。
三人の足並みがちぐはぐとなる。もうブラック・ユーモアである。

 

思っていた以上に楽しめる映画だった。
原題は単純に「キル」。邦題には「パーフェクト」が付いているのだが、全くパーフェクトではないところが面白い。
配給会社の人、ちゃんと映画を観てから邦題をつけたんだよねえ。