2010年 アメリカ
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン
軍事サスペンス。 ★★★
今では世界の大部分の人が、イラクには大量破壊兵器はなかったというのが真実だと知っている。
しかし、アメリカは執拗に大量破壊兵器の存在を信じて、イラク侵攻の大義名分とし続けた。
この映画はその点を描いた社会派の軍事もの。
米陸軍のミラー准尉(マット・デイモン)は大量破壊兵器の発見という極秘任務をおこなっていた。
今日も新たな情報を得て、部下を引き連れて銃撃戦をおこないながら捜索に向かう。
市街地での戦闘場面は手持ちカメラで映されていて、臨場感溢れるもの。
瓦礫の中を走り、物陰に隠れ、銃を撃ち、といった動作をおこなっている者の視点から撮られているように、画面は揺れ動きぼやける。すごい。
しかし、上層部からの指示に従っての捜索は、毎回なにも探し出すことが出来なかった。
こりゃ、情報がなにかおかしいのでは?
いったい誰がこの間違い続きの情報を提供しているのだ?
しかも、ようやく手にした重要な手がかりは国防総省のパウンドストーンが握りつぶしてしまう。
こりゃ、何かおかしいぞ。
アメリカのいろいろな組織の権力構造が日本人の目からはよくわからない部分もある。
軍、国防総省、CIA、このあたりの協力(対立?)関係、力関係がわかっていないので、ミラーが誰の命令に従わざるを得ない立場なのか、このあたりがわかりにくい。
しかし、いずれにしても誰の言葉が正しくて、誰が何を仕組んでいるのかが謎を孕んで、その何者かの狙いが大がかりすぎて恐ろしくなる。
なにしろ意味のない戦争をさせてしまっているのだから。
マット・デイモンは、「ボーン」シリーズ以来、かっての甘さや幼さを覆い隠して、すっかり精悍な俳優となった。
すっかりお気に入りの俳優である。
アメリカ、恐ろしい国である。
しかし、このような国ぐるみの陰謀(!)を告発するような映画も作れてしまうのだから、その意味ではすごい国でもある。