1998年 日本 85分
監督:石井輝男
出演:浅野忠信、 藤谷美紀
シュールな漫画の映画化。 ★☆
原作は(一部の間では)カリスマ的な人気を今でも持っているつげ義春の、(これまた一部の間では)大金字塔とされている漫画。
つげ義春は漫画雑誌「ガロ」で活躍をしていた。
それこそ、今から50年近く前のことである。
私もつげ義春は好きである。で、この映画も観てみた。
結果、駄目だった。
つげ義春の漫画の魅力を映画作品で越えることは、やはり容易なことではない。
映画はつげ義春の有名な漫画をつなぎ合わせている。
「もっきりやの少女」とか「赤い花」、「ゲンセンカンの主人」、「ねじ式」など。
そして冒頭と最後に、石井監督らしい裸体の男女の群舞が置かれている。
絵柄は、漫画の場面を忠実に描こうとしている。
少女ちよじの台詞や主人公の独白も、原作の通りである。
それならば、あの(魅力的な)漫画を映画に撮ろうとした意図は何だったのか?
谷川の橋の上での出会いや、もっきりやの少女の少し奇妙な言い回しは、原作を知るものには、好くここまで描いたな、とは思う。
耳鏡を頭にした和服の女医さんがお酒を飲んでいる向こうの方で軍艦が砲撃している場面も、ああ、と思わせる。
しかし、それはみんな原作の漫画の素晴らしさを思い出せるだけのものだった。
おそらく石井監督もつげ義春の大ファンなのだと思う。
自分の映画にしてみたかったという気持ちがあったのだろうことは、よく判るのだが。
つげ義春ファンも、石井監督ファンも、観ない方がいいと思う。残念ですが。